岐阜県高山市で作られている木製パズル「箱入り娘の大家族」がヒットしています。在庫10個だったところ、SNSのあるツイートがきっかけで、2500個以上の注文が入りました。スマホゲームなどが全盛の現代ですが、元宮大工の技で作る優しい手触りと、自分だけのストーリーを生み出せる柔軟さが思いがけぬ人気を集めています。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

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大ヒット中の「箱入り娘の大家族」=高山市漆垣内町、さわたく工房

 「箱入り娘の大家族」は高山市漆垣内町の「さわたく工房」が作っています。社長の大澤進さん(68)が20年以上前から手がけています。父や母、大番頭、兄嫁などの駒を動かすことで、娘の駒を盤の外へ出すゲームです。

◆宮大工の技術生かし、家族で製造

 大澤さんはもともと宮大工でした。25歳のときから高山市内の木材市場に通っているといい、「箱入り娘―」に使っているヒノキやイチイも自身で仕入れてきました。丸太から切り出した駒の面を取って丸みをつけるなど丁寧に加工。盤面に当たったときの音、木の香りも楽しむことができます。大澤さんの妻、娘夫婦ら家族で作っています。

ヒットのきっかけになったXの投稿

 6月22日、Xに「箱入り娘の大家族」の写真と一緒にあるツイートが投稿されました。「家族たちがマジで手強くて(中略)パズル得意なフォロワーに攻略してほしい」。投稿は注目を集め、3千万回近く表示されました。そこから注文が殺到。その日だけでオンラインショップに100件以上の注文が入り、夕方には家族会議を開く事態に。娘の吉澤明希恵さん(31)はさわたく工房のXを担当していますが、「これはやばい、という、うちのツイートもバズりました」。

 それまではオンラインや宮川朝市で月数個売れるほどでしたが、なぜここまで人気が出たのでしょう。明希恵さんによると、遊んだ人がそれぞれ物語を想像して楽しんでいるそうです。

◆「娘は外に出さん」「早く嫁に行って」

 「娘は外に出さん、だから僕は買わない」という若い父親や「娘は早く嫁に行ってほしいからこれで遊びます」という母親。Xでも「兄嫁はいるけど兄がいないのが不思議」「大番頭『お嬢さん!お幸せに・・・ッ』」「誰が去っても大番頭さんだけはお店と運命を共にするさだめなのですね」「引きこもりの息子をなんとか家から外出させて働きに行かせようというゲームになりそう」などユニークなコメントがあふれています。自分で書き入れるため、無地のパズルがほしい、という人もいるそうです。

「箱入り娘の大家族」を作っている皆さん。中央が大澤進さん。左から2人目が吉澤明希恵さん。

 現在、さわたく工房は進さんから明希恵さん夫妻への事業継承を考えているそうです。明希恵さんはこう話します。「事業継承に不安はありましたが、作っている商品に需要があることが分かりました。これを機に頑張っていきたいですし、多くの人に飛騨高山に遊びに来てほしいです」。

 「箱入り娘の大家族」は1個2500円。同社のオンラインショップから注文できますが、現在はあまりの人気に受注をストップしています。(取材・文 馬田泰州)