1月18日午後1時44分。岐阜県大垣市西部の田園地帯。黄色い車体は、一瞬で走り去っていきました。東海道・山陽新幹線を走る「ドクターイエロー」。2編成あるうちJR東海所属のT4編成が今月引退します。T4編成が走った18、19日には、沿線に多くのファンが集まりました。あまり知られていない地点で、ゆったりと見送ってきました。

 

 そもそもの話。「ドクターイエロー」って、何?というところから改めて。

 正式には「新幹線電気軌道総合試験車」といい、電気設備や信号、軌道などを走りながら状態を調べる車両。現行の923形は、700系をもとにしています。2001年からJR東海所属のT4編成が運用を開始。05年にはJR西日本所属のT5編成が登場。東海道・山陽新幹線の東京-博多間を走ってデータを測定してきました。

 老朽化が進んだことから、25年1月でT4編成が引退することになりました。T5編成での検測は当分続きますが、27年以降に引退する予定です。今後は、営業車のN700Sの一部の編成に必要な機器を載せることで、走行中の検査を行うといいます。

西に向けて走る「ドクターイエロー」T4編成=大垣市綾野

 ある程度一定の周期で走りますが、運行の日程は公表されていません。とは言っても、人口密集地帯を貫く東海道・山陽新幹線。走行時には親子連れや鉄道愛好家らを中心に人気です。出どころは定かではありませんが、「見かけると幸せになる」といううわさも現れるほど。鉄道ファンという岐阜市の40代男性は「いつ見られるか分からないところがいい。黄色に青帯の塗装も魅力」と話します。

 引退間際の「ドクターイエロー」T4編成。走るたびに集まる人の数が多くなっています。駅のホームは、ラッシュ時の通勤電車のような人だかり。景色がいい場所も、カメラの放列ができます。

 混むところに行くのは嫌。では、余裕を持って見られる場所を探しましょう。

 

 今回訪れたのは大垣市綾野。東海道新幹線の築堤や高架が田園地帯を東西に貫いています。防音壁が途切れるところもあります。

名阪近鉄バスの稲葉団地行き路線バス=大垣駅前

 大垣駅前から路線バスに乗り込みます。名阪近鉄バス稲葉線の稲葉団地行き。バスに15分ほど揺られ、太平洋前バス停で下ります。新幹線の線路付近までは歩いて20分ほど。真っ青な空。東海環状道の高架橋の西側には、真っ白な伊吹山が見えます。

 ほどよい位置でカメラを構えます。周囲にドクターイエローを見に来たらしき人影はありますが、100メートルは離れた場所。混雑とは正反対の状況。「のぞみ」「ひかり」「こだま」を何本か見送ります。

 岐阜羽島駅方面から黄色い物体が接近したと思う暇もなく、「ドクターイエロー」が駆け抜けていきます。...