精米工場に搬入された備蓄米=3月、埼玉県内

 政府備蓄米の放出が3月中旬に始まってから約1カ月半となるが、思うように流通は進んでいない。想定外の遅れは当初、事業者の輸送用トラックやパッケージ用の袋などの準備に時間がかかったことが原因だった。さらに、通常のコメとは別に行う精米処理の工程や、政府への報告なども負担になっている。

 「もう少し早く出回ると思っていた。事業者が備蓄米を流通させるのに時間がかかっている」。農林水産省の担当者は30日、小売店や外食事業者に届いた備蓄米が、放出されている量の1・97%にとどまるという結果を見て、こう話した。

 流通が遅れている要因の一つが、精米能力の問題だ。備蓄米は玄米で保管され、集荷業者から引き取った卸売業者が精米する。多くの業者が通常のコメに混ざらないように備蓄米を処理しており、関係者は「精米やコメの袋詰めが追いつかない状況だ」と嘆く。

 事務作業も重い。農水省は備蓄米の流通状況を把握するため、事業者に隔週で報告を求めている。事業者は、流通量や販売価格を管理する必要があり、作業に時間がかかっている。