靴下を履けるのは当たり前ではない―。きっかけは祖父の弱音だった。創業から70年がたとうとする靴下メーカー「マリモ」(名古屋市)の3代目社長が、誰でも簡単に片手で履ける靴下を開発し販売している。同社の日比野ほのか社長(32)は「今後も小さいニーズを拾い集めて人々を笑顔にする商品を作りたい」と意気込む。
5年ほど前、糖尿病などの影響で目が見えなくなった祖父敏夫さん=当時(92)=が、靴下を一人で履けず「情けない」とこぼす姿が胸に迫った。
開発に当たり大事にしたのは、当事者の声だ。県内の福祉用具業者に赴いて意見を求めたり、障害を抱えた子を持つ保護者の会に試作品を持ちこみ、アンケートに協力してもらったりした。
靴下の後部に取っ手を付けたり、履く向きに合わせて型を付けたりして足が出し入れしやすくなるよう工夫。2023年10月、販売開始にこぎ着けた。
商品は好評で「靴下を自分で履けて毎朝が楽しくなった」とメッセージをもらったことも。今年4月6日からはギフト向けにも売り出した。