朝日新聞阪神支局に掲げられた小尻知博記者の遺影の前で、手を合わせる男性=3日午前、兵庫県西宮市

 1987年に朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市)で記者2人が散弾銃で殺傷された事件から3日で38年となった。亡くなった小尻知博記者=当時(29)=の遺影を掲げた拝礼所が支局に設けられ、訪れた人たちは「暴力で言論を弾圧することに憤りを感じる」と語り、風化防止を誓った。

 拝礼所では参列者が花を供えて手を合わせ、資料室には散弾が撃ち込まれた痕のある服や取材ノートなどが展示された。

 38年前、朝日新聞京都支局(現京都総局)でアルバイトをしていた兵庫県西宮市の社会保険労務士前田卓也さん(56)も追悼に訪れた。当時は事件の意味合いが分からなかったと振り返り「年を重ねて重大さが分かった。事件を忘れてはいけない」と語った。

 小尻記者の出身地、広島県呉市では、朝日新聞社の幹部2人が墓前で手を合わせた。稲田信司広島総局長(57)は「戦後80年の節目に、圧倒的な暴力に言論はどう向き合うべきか改めて考える時期だ」と述べた。

 事件は87年5月3日夜に発生した。