長崎県の離島にある対馬市の観音寺から盗まれ、韓国に持ち込まれた県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」が12日、対馬市内に戻り、同寺に搬送された後、檀家の地元住民らを集めて法要が営まれた。韓国で10日、日本側へ引き渡されていた。日韓関係に悪影響を及ぼした問題が、2012年10月の盗難から約12年半を経て決着することになった。
観音寺の田中節孝前住職(78)は報道陣の取材に「(仏像が)元のところに帰られた。感激、感動、安心した」と話した。仏像は法要後、防犯上の理由などから、12日のうちに対馬市内の対馬博物館に運ばれ、保管される見込みだ。
韓国での引き渡しが行われたのは、仏像の所有権を主張していた同国中部・瑞山市の浮石寺。田中前住職らも同席して受け取った。仏像は空路で福岡県に運ばれた後、12日未明にフェリーで対馬市の港に到着。パトカーに先導され、トラックで観音寺に運ばれた。
仏像は盗難後、韓国当局が窃盗犯を摘発して回収したが、数百年前に倭寇に略奪されたものだとして、浮石寺が引き渡しを求めて16年に提訴した。