海底に残されたロープ。一部が海藻に覆われている=4月、静岡県西伊豆町沖(WWFジャパン提供)

 世界自然保護基金(WWF)ジャパンが、漁の最中に切れたり、流されたりして海を漂う「ゴーストギア(幽霊漁具)」の実態把握と回収に乗り出した。漁網に絡まった魚やカニが犠牲になるなど海洋生物に深刻な影響を与える懸念があり、環境汚染の原因にもなる。回収ノウハウを地域や環境団体と共有し、取り組みを全国に広めたい考えだ。

 伊勢エビの好漁場となっている静岡県西伊豆町沖で4月に行った回収作業では、水深約10メートルの海底から赤茶色の海藻が絡みついたロープが引き上げられた。ウキやおもりが付いており、刺し網のようだ。長期間放置され、網の部分はなくなっていた。エビや魚が隠れやすい岩の隙間に挟まっており、水産資源を傷つける恐れがある。

 網など漁具の多くは、ナイロンやポリエチレンなどのプラスチック製で、自然に分解されず海中に残り続ける。生き物が引っかかって負傷したり、船に絡まって航行を妨げたりする恐れがある。漁業が盛んな日本は幽霊漁具が多いと指摘されているが、沈んでいる場所や量などの実態解明はほとんど進んでいない。