がんへの免疫を妨害する細胞だけに働きかけ、免疫機能を回復させる新しい治療法を開発したと、大阪大などの研究チームが10日、発表した。マウスの実験ではがん組織が小さくなることを確認。既存の薬と組み合わせることで、治療が難しい種類のがんの完全な治癒が期待される。
今回チームは、がん細胞の周辺に存在する「がん関連線維芽細胞(CAF)」に注目。CAFは細胞内の酵素を使って、免疫細胞の働きを阻害する物質を生み出すなど、がんの増殖に関わっているという。
この酵素は、がん細胞以外の正常な細胞にも含まれるため、無差別に制御することはできない。そこでチームはCAFに限定して酵素の働きを抑える方法を考えた。
チームはタンパク質の設計図である「メッセンジャーRNA」に結合し、酵素を作る遺伝子の働きを抑える化合物を活用。CAFだけが持つ特殊なタンパク質を目印とし、CAFにピンポイントでくっつくようにしたところ、正常な細胞に影響を与えずに狙い撃ちにすることに成功した。