名鉄広見線(新可児-御嵩駅間)と同様に、地元自治体の支援を受けての運行が続いてきた名鉄蒲郡線。ともに、地元の支援がなくなれば線路が消えるという瀬戸際の状態でした。存廃の議論が当初予定の6月末からずれ込む見込みの広見線とは異なり、蒲郡線はすでに存続の方針を決めています。広見線と蒲郡線は何が異なるのでしょうか。蒲郡線沿線の自治体が存続をどう判断したのか。地域にはどのような効果があるのでしょうか。(岐阜新聞デジタル独自記事です)


名鉄蒲郡線は、2010年から沿線市町(合併で愛知県西尾、蒲郡の2市に)の支援を受けての運行が続けられてきました。支援の枠組みは広見線と同様です。
蒲郡線の場合は、吉良吉田駅で接続する西尾線の西尾―吉良吉田駅間も協議や運行支援の対象。両線・区間を合わせて「にしがま線」と呼んでいます。行政や事業者、沿線住民や各種団体が連携しての活性化策も繰り広げられていました。

十数年にわたり、沿線自治体の支援を受けてきました。しかし、コロナ禍による利用者減少や物価高騰により、従前の枠組みでの路線維持が困難になっているとの見解が名鉄から示されます。存廃を含めた検討が、広見線(新可児-御嵩駅間)、にしがま線ともに始まりました
にしがま線での新たな枠組みの検討や協議は2024年から。「名鉄西尾・蒲郡線(西尾駅~蒲郡駅)対策協議会」で、西尾市、蒲郡市、愛知県に中部運輸局、名鉄の5者が参加して進められました。両市は副市長が参加しています。
■蒲郡線「みなし上下分離方式」移行は2027年4月
蒲郡線の存続は2025年3月に決まりました。内容は以下の通りです。
・蒲郡線に「みなし上下分離方式」を導入、鉄道として存続。
・国の社会資本整備総合交付金の活用を目指す。
・運行期間は15年を基本とする。自治体が負担する維持管理や設備投資などの範囲は協議の上、今後決定。
・みなし上下分離方式への移行は27年4月。それまでは現行の支援を継続。
・西尾線(西尾-吉良吉田駅間)の運行と支援はこれまで通り協議の対象。蒲郡線と一体的に利用促進策を継続。
・今後の内容は、西尾市、蒲郡市、名鉄、愛知県で引き続き協議を進める。
検討の段階で、路線バス化、バス高速輸送システム(BRT)化、第三セクター化などは現実的でないとされました。そして、鉄道運行に関する設備投資や修繕費用の一部を自治体が負担する「みなし上下分離方式」を選びました。
自治体側が施設を保有する「公有民営型上下分離方式」では、運行事業者に施設を使わせる「第三種鉄道事業者」に自治体側がなる必要があります。一方、みなし上下分離方式では、その必要がありません。

みなし上下分離方式に移行するのは蒲郡線だけ。これは、国の社会資本整備総合交付金を活用するためです。
鉄道路線1キロあたりの1日平均輸送人員を「輸送密度」といいます。この制度の対象は輸送密度4000人未満が目安とされていることから、輸送密度が1500~2000人程度の蒲郡線をみなし上下分離の対象としました。
存続方針を決めた3月の対策協議会では、自治体の負担する金額や割合を決めていません。金額や割合は今後詰めていきます。協議会の事務局を担う西尾市の担当者は「物価高騰などにより、今後上振れする可能性もある」と、金額などを盛り込まずに存続を決定した理由を説明します。

また、国の支援を受けるために必要となる「鉄道事業再構築実施計画」の国(国土交通大臣)からの認可などに「一定の期間が必要」ともしています。
存続が決まった蒲郡線。西尾市の担当者は「沿線外の市民には『(鉄道の有無は)どちらでもいい』と思っている人もいる。しかし、(廃線で自動車の交通量が増加することによる)道路渋滞の悪化など、実は沿線外でも影響はある。そのことを理解してもらえるよう、協議の経過などを公表していった」と話します。
■蒲郡線存続で迎える「まちづくりの正念場」
15年程度という中長期の存続が決まったことで、沿線の中学校や高校の関係者からは、安心の声が出ているといいます。...