能登半島地震の爪痕が残る石川県輪島市町野町=6月30日

 昨年元日の能登半島地震は、1日で発生から1年半となった。被災地では、損壊した建物の解体や道路などのインフラ復旧が進み、住民は生活再建に向け懸命に前を向く。一方で、今も2人の行方が分かっていない。「夢を何度も見た」。家族や知人は寂しさを抱え、ただ早く見つかることを祈る。

 「兄が見つかる夢を見て目覚めるたびに、なかなか見つからないなと思ってしまう」。輪島市町野町の伏木野茂雄さん=不明時(68)=の妹(67)は悲痛な声で話した。

 茂雄さんは実家に1人で、自身は隣の珠洲市で暮らしていた。茂雄さんは足が悪かったため、通院や買い物に付き添った。地震直前の2023年末も訪ね「年明けにまた来る」と伝えて別れた。

 だが、地震発生以降、連絡が取れなくなる。自宅が半壊したため、金沢市の娘の家に身を寄せていたが、安否が気になり実家を見に行った。裏手の山が崩壊して家は押し流され、岩が堆積。変わり果てた光景に言葉を失った。「跡形もない。涙よりも先に、驚くばかりだった」と振り返る。