大浦天主堂周辺を訪れ、記憶をたどる杉良太郎さん=4月、長崎市(杉友提供、画像の一部を加工しています)

 歌手で俳優の杉良太郎さん(80)が、55年前に長崎市を慰問した時に出会った女性の被爆者を捜している。女性がケロイドをそっと見せてくれたあの時、「何も言えなかった」。ずっと心残りを抱えてきた。今年4月には長崎を訪問するなど、手がかりを求め続けている。

 1970年5月、25歳だった杉さんは主演映画の宣伝を兼ねて、広島と長崎を訪れた。原爆病院などを慰問し、多くの被爆者とふれあった。

 大浦天主堂(長崎市)近くの民家のような建物で着物姿の女性が食事を出してくれた。160センチ前後と当時としては背が高く、杉さんより少し年上に見えた。何の気なしに「結婚されていますか」と尋ねた。女性は隣の部屋に杉さんを呼ぶと脚のケロイドを見せた。「これだから、結婚できません」

 病院で出会った人たちは手など見える場所にケロイドや水ぶくれがあり、被爆したことがはっきり分かった。ところが普通に生活しているように見える人が、被爆の苦しみの中にある。その生々しさに、杉さんは返す言葉が出なかった。

 情報提供は所属事務所「杉友」(info@r-sugi.jp)へ。