認知症の人らを支援する成年後見制度の見直しに向けた議論が、法制審議会(法相の諮問機関)で進んでいる。本人が亡くなるまで利用が続く「終身制」の廃止を盛り込んだ中間試案への意見公募が、6月25日に開始。識者は、潜在需要に応えるため利用期間や場面を限定するという試案の方向性に賛同する一方、終了後も本人をサポートできる仕組みを構築する必要があると指摘する。
試案では、本人の判断能力に応じて分けている「後見」「保佐」「補助」の3種類の柔軟利用や、特定の行為に絞った代理権の付与などが示された。いずれの案でも「終身制」は撤廃の方向だ。
政府推計で認知症の高齢者は2025年に471万人に上るが、最高裁によると24年末時点の成年後見利用者は約25万人に過ぎない。
社会福祉士として成年後見活動に取り組んできた同志社大の永田祐教授(社会福祉学)は、終身制廃止や、場面に応じたスポット的な利用が実現すれば、潜在的なニーズを引き出す可能性があるとみる。自身の経験を踏まえても、現行制度は柔軟性を欠くと感じてきたからだ。