6月28日の広島戦に登板した中日・福=バンテリンドーム

 6月28日、バンテリンドームナゴヤ。マウンドに上がった中日の福は、見慣れない短髪姿になっていた。伸ばし続けていた髪をばっさりと切った理由は、毛髪を失った人のために髪を寄付する「ヘアドネーション」。男性アスリートとしてはまれな取り組みを「こういう活動があることを周知できればいい」と笑顔で振り返った。

 2020年最優秀中継ぎ投手の契機は、22年オフ。小児がんと闘う子どもたちと交流した際、医療用ウィッグの材料として髪を提供するヘアドネーションの存在を知った。「男性でやっている人は少なそう。俺がやってみよう」。3年にわたる挑戦が始まった。

 毎日ヘアオイルを塗るなどケアは欠かさず、髪質を維持。ついに長さが活用可能な約31センチまで達し、久々に美容院へ。切ってもらった髪の束を手にし「これだけやったんやな」と実感を込めた。

 自身も国指定の難病「胸椎黄色靱帯骨化症」を患った経験を持ち、病気などに悩む人たちへのサポート活動は精力的だ。22年からは聾学校に通う生徒を試合に招待するプロジェクトを行っている。