株式会社ベネッセスタイルケアグループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長CEO:小林 仁)のグループ会社である株式会社ベネッセスタイルケア(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:滝山 真也、以下「当社」)では、専門性の高い介護職(「マジ神」注1)が、日々蓄積されるご入居者様の様々なデータを利活用し、多角的かつ効率的に質の高い介護サービスを提供する際のノウハウを援用し、経験の浅い介護職であっても専門性の高い介護職に近い介護サービスの提供を可能とする、業務支援・人財育成システム「マジ神AI」(図1)の開発と効果検証を進めています。注2
当社の社内シンクタンクであるベネッセ シニア・介護研究所は、今年度も効果検証において明らかになった知見を、人工知能学会全国大会(第39回)ならびに第26回日本認知症ケア学会大会にて発表いたしました。
◆マジ神AIの活用が専門性の高い介護職と同等の状態把握を促進する可能性を示唆
~マジ神AIが介護職のデータ利活用に与える影響(日本認知症ケア学会大会で発表)~マジ神AI先行導入ホームの介護職のデータ利活用の仕方を分析するため、マジ神AIが組み込まれた介護記録システム(サービスナビゲーションシステム)を利用してご入居者様の現状把握をする職員の視線を計測し、そのデータを提示しながら、現状把握の際の思考と普段のマジ神AIの活用について尋ねるインタビューを行いました。分析の結果、マジ神AIの利用頻度が高い職員は、テキストデータよりも定量データを見る割合が多く、マジ神AIのダッシュボード(図1)で各種定量データを確認した後にテキストデータを見ていました。
このような情報収集の仕方は、これまでの分析で明らかになったマジ神の情報収集の仕方注3(図2)と類似しており、マジ神AIの活用が専門性の高い介護職と同様の状態把握を促進する可能性が示唆されました。

図1:マジ神AIダッシュボードの画面の例

図2:マジ神およびマジ神AIの利用頻度が高い職員の情報収集の仕方
◆マジ神AIを活用したケアの実践によってご入居者様の状態が向上する可能性を示唆
~マジ神AIを活用した介護サービスの実践がご入居者様の状態に与える影響(人工知能学会全国大会で発表)~マジ神AIがご入居者様の状態にどのような効果をもたらすかについても、包括的に検証しました。マジ神AIを先行導入した31ホームを対象に、導入前にご入居された方231名と導入後にご入居された方244名のご入居から6か月間のデータを分析しました。対象ホームのマジ神AIの活用度別に分析すると、活用度の高いホーム(図中青色の線)では、マジ神AI導入後はご入居者様の生活の様子を記した記録に占める「快」の記録の割合が有意に多くなり、「不快」の記録の割合や事故件数が有意に少なくなったことがわかりました(図3)。これにより、マジ神AIを活用したケアの実践によってご入居者様の状態が向上する可能性が示唆されました。

図3:マジ神AI導入前後の「快」「不快」の記録の割合、BPSD(認知症の行動・心理症状)の割合、事故件数の比較(*: p<0.05で導入前後の有意差あり)
マジ神AIを通じた介護記録などのデータの利活用による人財育成は、ご入居者様のQOLの向上を目指したものであり、介護分野の真の生産性向上に大きく貢献すると考えています。当社では、今後もマジ神AIの活用促進とそれに伴う効果の検証を継続して行ってまいります。
◆発表演題一覧
今年度の日本認知症ケア学会大会および人工知能学会全国大会における当社からの発表演題は以下の通りです。当社運営ホームの発表においては、11ホーム中7ホームの事例が取り組みにおけるマジ神AIの活用に言及しました。【第26回日本認知症ケア学会大会】(2025年5月31日~6月1日、於福岡国際会議場)
- 「マジ神AI」が介護職のデータ利活用に与える影響 ~視線解析とインタビューに基づく分析~
(ベネッセ シニア・介護研究所)
- 外国人介護職員とその同僚職員との関わり・意識に関する実態調査 ~受入2年間の困りごと・不安の変化から考える継続的なサポート~(ベネッセ シニア・介護研究所)
- BPSD改善に向けて小集団でグループダイナミクスを活用した取り組み(アリア嵯峨嵐山)
- 本人が1番望むケアを実践するために ~夜間の排泄介助におけるケアの統一を通して~(アリア等々力)
- 生活リズムを整え人とのつながりを取り戻す ~意識消失改善から始まる認知症ケア~(くらら仁川)
- 認知症を持つ高齢者の「常に誰がためにありたい」思いをかなえるための取り組み ~早朝奉仕の記~(グランダ上杉雨宮弐番館)
- 認知症・精神疾患の方に対する医療連携と認知症ケアによる新しい場所の実現(グランダ多摩川・大田)
- 職員の心を動かし入居者のQOLと意欲向上を実現する認知症ケア ~心の声に耳を傾けて~(メディカル・リハビリホームボンセジュール秦野渋沢)
- 不安、不快の緩和とありたい姿の実現に向けた多職種でのアプローチ ~思い込みを捨て、本人のやりたいことに向き合った事例~(メディカル・リハビリホームまどか哲学堂)
- 多職種連携に取り組み見えてきた施設職員と認知症ケアの変化(メディカルホームグラニー鷺沼・川崎)
- 人との関わりを通じて、未来を見据える生活の土台を作ることができた事例 ~いつまでも理想の自分であり続けたい~(メディカルホームくらら調布)
- 家族とともに歩む ~有料老人ホームの強みを生かした高次脳機能障害支援(メディカルホームここち東岩槻)
- その方を知ることでもたらされる職員の行動の変化と「本当のわたし」の再獲得(リハビリホームグランダ武蔵関)
【人工知能学会全国大会(第39回)】(2025年5月27日~30日、於大阪国際会議場)
- 「マジ神AI」を活用した介護サービスの実践が被介護者の状態に与える影響(ベネッセ シニア・介護研究所)
ベネッセスタイルケアは、これからも「その方らしさに、深く寄りそう。」を実現するための取り組みを推進するとともに、その効果を検証し広く発信してまいります。
注1: (株)ベネッセスタイルケアでは、高い専門性と実践力をもつ介護の匠を「マジ神」として認定する社内資格制度を設けています。マジ神には「認知症ケア」「安全管理と再発防止」「介護技術」「医療連携&ACP(Advance Care Planning)」の4つがあり、資格を取得した社員には資格手当も支給されます。マジ神たちが培った知見を言語化し、研修を体系化することで、次のマジ神の育成を行っています。
注2:当該事業は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和3年度「ロボット介護機器開発等推進事業(開発補助)」の研究課題「AIによるBPSD要因及び”いつもと違う”予兆検知を通じ真の生産性向上を実現する介護業務支援システムの開発」として採択されたものです。
注3:当社リリース「ベネッセ シニア・介護研究所 「マジ神解体新書 ~専門性の高い介護職の認知症ケアのための情報収集における特徴~」と題し、第 24 回日本認知症ケア学会大会で発表」
(https://www.benesse-style-care.co.jp/lab/assets/pdf/20230606_release.pdf)

ベネッセ シニア・介護研究所
https://www.benesse-style-care.co.jp/lab/
<ベネッセスタイルケアグループについて>
ベネッセグループでは、不変の企業哲学「Benesse(=よく生きる)」の元、30年以上にわたり、入居・在宅介護事業、保育・学童事業を通じてその方らしさに深く寄りそい、お一人おひとりの「よく生きる」の実現に取り組んでいます。急速に進む少子高齢化と介護人材不足などの介護・保育を取り巻く環境の大きな変化の中でも、誰もが人生の節目を楽しみながら、自分らしく豊かに生きられる世界を実現できるよう、介護・保育領域を中心とした「人」に関わる社会課題に今まで以上に積極的に挑戦を続けていきます。持続可能な介護・保育事業の推進のほか、介護食事業・介護HR事業の取り組み、さらに働き手が不足する日本における介護・育児と仕事との両立支援サービス等、社会課題の解決に向けた取り組みを一層加速させていきます。
(ベネッセスタイルケアグループ企業サイト https://benesse-scg.co.jp/)
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