手記の出版について記者会見した立川裕子さん=4日、長崎市役所

 長崎原爆の爆心地から1キロ余りで負傷しながら生き延びた立川裕子さん(94)の手記が今年出版された。被爆から3日間の体験をつづった。3年前に続き2作目となる今回の書籍では、自身の証言をQRコードから視聴できる。「戦争のない平和な時代を若者に託したい」と願いを込めた。

 当時長崎県立高等女学校3年で、動員先の工場の事務所にいた。無数のガラス片が突き刺さって血がほとばしり、負傷者を乗せた「救援列車」で火の海を運ばれた。今でも肩には四つの破片が残る。

 被爆から半年の間に体験をノートに記した。救護所から自宅に戻り、けがで休学が続いていた頃、「こんな悲惨な目に遭ったことを忘れないうちに書き残そう」と決意した。その後、ノートは行方不明になっていたが、2019年に見つかった。

 手記を読んで怖くなり、本を閉じる若者もいたと聞いた。だが「私はそんな悲惨な目に遭い、乗り切ってきた」。手記を読み「本当に戦争はしちゃいけないと思ってほしい」と訴える。

 700円で、長崎原爆資料館などで購入できる。電子書籍も販売中。