岐阜市リサイクルセンター(同市木田)には、捨てられたペットボトルを手で分別するエースがいます。リサイクルできないペットボトルを取り除くその技術は「まさに神業」(同僚)。チーム内で頼りにされているエースは、自閉的傾向と知的障害のある男性です。取材すると、ふた・ラベルを外す必要性や、ビン・缶混入の危険性も見えてきました。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

 

 ◆「瞬時に見分けられる」

ペットボトル分別のエース、水上真さん=岐阜市リサイクルセンター

 社会福祉法人いぶき福祉会の水上真さん(35)はほぼ毎日、センターに出勤します。岐阜市内の家庭からごみとして出されたペットボトルから、リサイクルできないペットボトルを手で取り除くことが仕事です。6人で1チーム。50分作業と15分休み。これを1日6サイクルこなします。

 水上さんの仕事は素早く、正しく、迷いがないことが特徴です。

 センターでは、岐阜市の家庭から出されるペットボトルの全てを処理しています。1日最大10.3トン処理できますが、暑い夏の今ごろが一番多いといいます。選別の現場ではベルトコンベヤーで大量のペットボトルが目の前を流れます。ふたやラベルがついたまま、中身が入ったまま、つぶされている、汚れている、など状態はさまざま。空き缶や洗剤用のプラスチック空き容器が混入していることもあります。

 そんな洪水のように流れてくるペットボトルの中から、リサイクル不可のペットボトルを水上さんは次々に取り除いていきます。同僚は「いいか悪いか、水上さんは瞬時に見分けられます」と言います。

 ◆もともとは利用者だった

「仕事は楽しい」と話す水上さん(右)

 もともとは、いぶき福祉会の利用者でした。他人とコミュニケーションを取るのが難しく、こだわりも強い水上さん。転機はペットボトル選別チームへの転籍でした。選別チームの主力に成長した結果、昨年12月にいぶき福祉会の職員になりました。水上さんの特性が開花したのです。

 職員の山本昇平さん(46)は、水上さんが職員になることを告げたときのチームの様子を忘れられません。「ほかの仲間(利用者)もいましたが、みんな、わー、すごい!よかったね!と喜んでくれました。それだけみんな水上さんの働きぶりを認めていたからだと思います」。水上さんは取材に「キャップ、ぽいっするの楽しい。これからも続けたい」と話してくれました。

 ◆ふたは外して、ビン混ぜないで

ペットボトルを選別する現場。右手前が水上さん

 そんな現場ですが、課題は少なくありません。まず、ふたやラベルが付いたまま捨てられるペットボトルが多いことです。ふたがついているとリサイクルに回せません。

 「選別の現場でふたを外せばいいじゃないか」と思うかもしれませんが、外す作業は時間がかかり、その間にどんどんベルトコンベヤーで流れていきます。筆者も許可を得て選別作業を体験させてもらいましたが、まずムリです。捨てる段階でふたやラベルを外すことが重要です。

ペットボトルのごみに混入していた空き缶など

 もう一つはビンや缶の混入。処理の構造上、ペットボトルの選別場に来る間にビンは高い確率で割れます。チームメンバーたちは切れにくい軍手の上に分厚いビニール手袋、すねまである安全靴で作業します。岐阜市リサイクルセンターでは今まで大きなけがはないといいますが、他の事業所では事故も報告されています。

 岐阜市では数年前までビンや缶とペットボトルが一緒に収集されていました。その名残が一部の市民にあるのかもしれませんが、選別の現場は危険にさらされています。「ビンや缶の混入は現場の安全に直結します」と山本さんは言います。

 ◆やってみた、ダメだった

 特別に許可をもらい、筆者もペットボトルの選別を体験させてもらいました。...