岐阜県高校野球は来春の選抜出場を目指す秋季県大会の熱戦が繰り広げられている。今夏の甲子園でベスト4となり、全国的に話題となった県岐阜商は、県大会初戦で敗れ、来春の選抜出場が絶望となった。だが、名門の同校として16年ぶり、岐阜県としては2019年の中京以来6年ぶりのベスト4となった今夏は、岐阜県の悲願の戦後甲子園初優勝に向け、大きな起点となった。今夏躍進の礎(いしずえ)を築いた前監督、鍛治舎巧さんは秀岳館(熊本)時代に甲子園3季連続ベスト4に導いている。16年間で3度のベスト4の岐阜県にとって厚い〝ベスト4の壁〟をどうしたら突破することができるのか、今後の高校野球はどうなっていくのかを鍛治舎さんに聞いた。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

「今夏の県岐阜商甲子園ベスト4を県全体でいかに次につなげるかが重要」と語る鍛治舎巧さん=大阪府枚方市、鍛治舎さんの自宅

 ―改めて今夏の甲子園ベスト4を振り返って

 鍛治舎 母校は本当によく顔晴ってくれた。チームテーマ「底抜けに明るい最強チーム」を掲げた選手たちは、最後まで笑顔を絶やさずチャレンジしてくれた。欲目かもしれないが、準決勝に残った4チームの中でも、母校が一番余力があったように感じた。藤井潤作監督のこの1年の苦労が実った。

 甲子園開幕前は、ここまでの健闘は全く予想していなかった。でも、さすがキャプテンの河崎広貴、いい抽選を引いたな(笑)、うまくいけばベスト8あたりまでは行けそうだとは思っていた。岐阜大会の初戦で5本のホームランを打ち、チームが勢いに乗って、その勢いのままに甲子園に乗り込んでベスト4まで駆け上がったという印象、そして試合経過だった。

 低反発バットに選手たちが慣れてきて、芯でとらえれば、低反発のバットも木のバットも飛距離は同じ。それでも広い長良川球場で1試合に一つのチームが5本ホームランを打つのは、さすがに、最近では、見たことも聞いたこともなかった。

 ―それも鍛治舎さんの野球がベースになって今夏、花開いたと思いますが

 鍛治舎 私の野球は1年前までです。今回の躍進は藤井監督の成果。そんな中でも、追い込まれてからのノーステップ打法は、みんなが実践していた。枚方ボーイズでの教え子の小園海斗(広島)や藤原恭太(千葉ロッテ)もプロに行ってもやっているが、目線がブレないので、低め変化球の見極めができ、バットを短く持ち、センターから反対方向に強く打ち返すので、ミートポイントも近くなり、長く投球を見るからヒットになる確率も高い。甲子園でも3年生がよく継続してやってくれたなと思う。

 加えて言えば、選手たちが好きな言葉に私の座右の銘の「顔晴る」とか「思わないことは叶わない」を何人かが挙げていて、ああ、覚えていてくれたんだなと感じ入って、涙が出た。

 藤井監督もどっしり構え、地に足のついた采配をしていて、まさしく彼流の野球が花開いた夏だった。この快進撃を母校だけでなく、岐阜県全体で、次にどうつなげるかが重要だと考える。

 岐阜県の野球の東海4県における位置づけは、...