育児休暇を取得し自宅で子どもと過ごす男性従業員=飛騨市古川町

 創業から152年になる岐阜県飛騨市古川町の造り酒屋渡辺酒造店で働き方改革が進んでいる。従業員の意識変革とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によって酒の仕込み作業での夜勤を廃止し、酒造り担当の男性従業員が初めて育児休暇を取得した。

 同社の従業員は男性27人と女性25人の計52人。日本酒造りは9月から翌年6月末まで行われ、この間の240日ほどは発酵するもろみなどの温度管理と対応で夜勤が不可欠だった。夜勤は酒造り担当の8人が担い、1人当たりで30日程度の夜勤があった。

 デジタル技術を活用して従業員の生活と業務をより良くするため、もろみなどの温度を遠隔から監視して制御できるシステムを導入し、酒造り担当者がスマートフォンで温度の計測値と機器の作動状況などを確認するようにした。

 このため酒造り担当者の夜勤を昨年10月に廃止し、同社は男性従業員の育児休暇取得率100%の実現を目指す宣言を1月に行った。こうした職場環境の改善によって従業員の働き方に対する意識も変わってきたことから、酒造り担当の男性従業員(34)が3月22日から4月11日までの21日間の育児休暇を取った。

 男性従業員は27歳で同社に入り、同町の自宅で家族と暮らす。7歳の長女、5歳の次女がおり、3月22日に3女が生まれた。育児休暇では子どもの見守りと保育園の送り迎えなどを行い、子どもと多くの時間を過ごしている。男性従業員は「昨年、会社に事情を伝えた。仕事での心配がなくなり、家で家族と共にいる時間が持てている」と話す。

 渡辺久憲社長(53)は「酒造りの考えや技術もオープンとなり、造り方は数値化し共有できる。作業で置き換えられるところは機械化し、人による手仕事の品質を高める。育児休暇も、そうした動きでの取り組みの一つ。酒造りがさらに選ばれる仕事となるよう、工夫を重ねていきたい」と語った。