岐阜大医学部に来春の開設を目指す「妊産婦と子どものこころ診療学講座」の請願署名への協力を求める塩入俊樹教授=岐阜市柳戸、同大

 周産期うつなどを要因にした妊産婦の自殺が社会問題となる中、岐阜県内の産婦人科、小児科、精神科の医師らが、妊娠の段階から子育てへの不安を抱える母親に関わり、生まれた子どもへのネグレクト(育児放棄)などの虐待防止につなげようと、妊産婦と子どもの心のケアに携わる専門医の育成へと動き始めている。2023年度にも岐阜市柳戸の岐阜大医学部に「妊産婦と子どものこころ診療学講座」を県の寄付講座で開設するため、請願の署名活動を展開している。

 呼び掛け団体の講座設立準備委員会メンバーの一人で、岐阜大精神科医の塩入俊樹教授(60)は「メンタルに不安を抱える母親や子どもに専門医だけが関わるのではなく、県民の皆さんにも請願署名に賛同してもらうことで、孤立させず、社会全体でサポートしていく気運を高めるきっかけにしたい」と訴える。3月末までに県民の1%に当たる約2万人の賛同者を集めることを目標とし、県議会議長宛てに請願書を提出する予定だ。

 18年に国立成育医療研究センターが発表したデータ(15~16年の統計)では、妊産婦の死因のトップは自殺だった。原因の一つに、子育ての不安やストレスで起きる周産期うつが考えられている。塩入教授は「母親がメンタルに問題を抱えると、子育てが十分にできず、そのままネグレクトにつながりやすい。親子のコミュニケーションが足りないと、子どもの発育や愛着形成にも強く影響し、言葉や感情が乏しくなるなど負の連鎖が起きる」と指摘する。そのために妊娠の早期の段階から専門医らが介入し、生まれた子どもまで切れ目のない支援が重要だとする。

 だが実際には、妊産婦や子どもの心のケアに携わる児童精神科の専門医は県内では8人(19年、日本児童青年精神医学会登録数)と少なく、東海北陸6県中で5番目だという。さらに養成する専門の教育機関もないのが実情だ。子どもの心の発達に関する講座は名古屋大や信州大で開設されているが、岐阜大は妊娠段階の母親の心のケアも取り入れた内容で、全国的にも先進的な取り組みという。講座は医学生を対象に23年4月の開講を目指す。

 「コロナ禍で、孤立する母親や子どもの置かれた環境はより一層切実さを増している。誰もが安心して出産、子育てができる環境を整えるためにも、県民の皆さんの力で講座開設を急ぎたい」と訴える。請願書は、準備委員会事務局の岐阜大大学院精神医学分野ホームページからダウンロードできる。