承諾なしに書籍で関係者の実名を挙げられたとして、岐阜県白川町の「旧満州黒川開拓団・黒川分村遺族会」が、書籍を出版した集英社と著者のノンフィクション作家・平井美帆氏に質問状を出した問題で、同社は遺族会に「実名を使用したことに問題はなく、著者が実名を記載しない旨約束して取材を行ったことも一切ない」との回答書を送った。書面は15日付。

 回答書では、同社新書編集部が、平井氏から受けた回答も内容に含めて見解を述べている。書面では「本作の出版が、遺族会の方々の心を傷つけていることを知り、その事実を重く受け止めている」とした上で、実名表記については「黒川開拓団の歴史は、日本社会全体で共有され、検証されるべき史実であり、史実に基づいた忠実な記述は、公益性の観点からも極めて重要」とし、「正確性、真実性、検証性の担保のために、原則実名が用いられている」と説明した。

 また、「存命の被害女性の方々からは、著者が書籍化を前提に取材を行った際に実名を出すことを承諾いただいている」とし、遺族会から、不適当な記述や事実と違うと指摘を受けている箇所についても、「事実誤認と認められる箇所はない」と答えた。

 遺族会の藤井宏之会長(70)は「残念な思い。もう少し遺族会の気持ちを分かってもらえるかと思っていた。内容を精査して、あらためて聞きたいことは聞く」と話した。

 書籍は1月に刊行された「ソ連兵へ差し出された娘たち」。終戦直後、旧満州(中国東北部)で性的な「接待」をさせられた女性や団の関係者が、一部を除き実名で表記されている。