岐阜県富加町の町営住宅で2000年に話題となった「怪奇現象騒動」をご存じだろうか。新築のマンションで、妙な音がしたり、物が動いたり、果ては人影を見たりといった相談が住民から寄せられたのだ。社会的な超常現象ブームもあってか、多くのメディアが詰めかけて「ポルターガイスト」「幽霊マンション」などと取り上げる騒ぎとなった。あれから22年。先月下旬から、マンションで起きた現象を基にしたホラー映画が全国公開されており、もしや町が再び注目を集めているのではないか。「霊感」の全くない記者が、そっと現地を訪ねてみると、恐ろしげな呼ばれ方とは異なる姿が浮かび上がった。

富加町の町営住宅で発生した騒動について伝える2000年10月21日付の岐阜新聞朝刊

 のどかな町に、そのマンションは今も変わらず建っている。とうの昔に騒動は収束し、住民は静かな暮らしを取り戻している。今さらチャイムを鳴らして回るのも迷惑だ。ちょうど春風が心地よい。当時に思いをはせ、マンションを見るともなく見ていると、夫婦らしき2人連れの車がマンションの駐車場へ入っていく。せっかくなので、ダメ元で一言だけ。「すみません、20年ほど前の怪奇現象の騒動ってご存じでしょうか…」

皿飛んだ、謎の人影が…真偽は 当時から住む男性に遭遇

 すると、70代だという男性から「あの頃も住んでいたよ」との答えが返ってきた。当時を知るマンションの住人はほとんどいないと聞く。なんという偶然だろう。

 「あれは、いつごろだっけ。もう20年以上も前? そうかあ。あの頃は、お皿が飛んだとか聞いたね。家の中で人影を見たって話もあったよ」。生々しい証言に、鼓動が早くなる。それで、ご自宅はどうでしたか―。「いや、僕のところはそういうことはなかったね。お皿が飛んだって言っていた人も、もう引っ越したよ」。残念なような、ホッとしたような。

騒動は収束し、住民は静かな暮らしを取り戻している=岐阜県富加町

 映画化については、どう受け止めているのだろう。「それは初耳。でも映画になると、どんなところだろうって見に来る人がいるでしょう」。はい、来てしまってすみません。「いや、(取材は)いいですけどね。知らない人に大勢来られて、じろじろ見られるのは嫌だからね」

 2人にお礼を言って、マンションを後にする。騒動の当時はきっと嫌な思いをたくさんしたのだろう。ご迷惑をおかけしました。

怪現象の正体…専門家「ウオーターハンマー現象」

 一連の騒動については、2000年10月21日付の岐阜新聞朝刊でも紹介していた。「富加町の町営住宅オカルト騒ぎ」「住民の不安解消されず」などと伝えている。当時の他メディアと比べると、かなり控えめな書きぶりだ。ブームとはいえ、いわゆる超常現象をストレートに扱うことにためらいがあったのかもしれない。

騒動は新築から半年もたたずに起きた

 紙面によると、騒動のあった住宅は同年3月に新築され、8月になると住民から騒音の苦情や「食器棚の戸が開いて食器が割れた」などの〝怪現象〟が報告されるようになったという。異音の正体については、調査した専門家の言葉として「水道の圧力変化によるウオーターハンマー現象や部材の温度変化」の可能性を指摘している。

ずっと前から起きていた? 異説「神様の通り道」

 ただ、記者がマンションを訪ねた際、幽霊でも水道でもない全く別の説を耳にした。

 近くに住む70代の男性は「神様が毎朝、近くの山から町へ降りてきていたが、マンションが建ったせいで通れなくなり(騒動が)起きた」と説明する。その〝証拠〟として「わが家では40年くらい前から毎朝5時になると、決まって2階の角がガタガタ揺れた。屋根の上を神様が通っていく音だった」と真剣な面持ちで話す。原因は幽霊でも水道でもなく、「神の道」だというのだ。

原因が「神の道」だとすれば、むしろパワースポットなのかも!?

 男性の言葉通りなら、騒動の20年ほど前からすでに「現象」は起きていたことになる。幽霊の仕業ではなく、神様が必ず立ち寄る(?)場所だったとすれば、心霊スポットのような扱いはとんでもない。むしろマンションは、強力な「パワースポット」と言えるのかもしれない。