子どもに対して、女性器をなんて呼んでいますか―?

 子育て中にふと感じた疑問について、岐阜市出身でベルリン在住のクリエーター雨宮美穂さん(35)がSNSで問い掛けたところ、「どう教えればいいか悩んでいた」との声が続々と寄せられた。呼び方も「おまた」「ちょんちょん」「おちんちん」など、迷いを表すようにさまざま。一男一女を育児中の雨宮さん自身は「おまんまん」と呼んできたが、日本で口にしたところ、周囲にギョッとされたという。「女性器を言葉にすること自体がタブー視されている」と感じた雨宮さん。考え方は人それぞれとした上で、「性差の理解や自衛のため、あいまいな呼び方を教えたくない」と、今後も「おまんまん」を貫く考えだ。

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 雨宮さんは夫とともに4歳の長男、1歳の長女を育てている。日頃から性教育の大切さを感じており、長男にも「人のおちんちんやおまんまんは触っちゃだめだよ」「大事だから、人に触られたら嫌って言っていいからね」などと教えてきた。ところが、岐阜市に帰省した際、周囲から「それ(おまんまん)はあかんやろ」と驚かれ、首をかしげた。「おまんまんは、口に出しちゃいけない言葉なの!?」

「おまた」が多数派

 友人知人から寄せられた呼び方で最も多かったのが「おまた・おまたちゃん」。続いて「おちょんちょん・ちょんちょん」や、女の子でも「おちんちん」。ほかにも「おまんじゅう」「まんちゃん」「おぺぺ」「われめ」「おちょちょ」「おもんもさん」などバラエティー豊か。「おまんまん」については、4割弱の人が問題ないとの反応だったという。

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 同時に、呼び方に悩むという声も多かった。雨宮さんは女性器そのものを直接呼ぶことと、人前で言っていいかどうかは別問題と捉え、前者については「プライベートゾーンに関して、やんわりとその辺り、ではなく、性差の理解や自衛も含めてしっかり知ってほしい」との考え。多数派だった「おまた」にはあいまいさを感じ「わが家では名指しして呼ぼう」と決めた。後者については、子どもたちが大きくなるにつれてTPOに応じた呼び方を考えてくれればいいと思っている。

 雨宮さんはその後、再びSNSでドイツ人など日本人以外のグループに向け、女性器の呼び方について質問。数時間で100件以上の回答があり、多くが女性器は「ヴァギナ」、男性器は「ペニス」と呼んでいる、呼ぶべきとの意見だった。「手や足だって、わざわざ他の呼び方をしないでしょう」などと当たり前のことと捉える声が多かった。一方、日本ほどではないものの、一部には男性器より女性器の方が言葉にしづらいとの意見もあったという。

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 「なんて呼ぶかよりも、オブラートに包んでしまわないことが大事」と雨宮さん。「呼称はちゃんとピンポイントに部位を指し示せる言葉で、愛着を持てるものであればいい」と考えている。

大人が偏見なくし議論すべき

 子育て中の保護者向けに性教育講座などを開く泌尿器科医の岡田百合香さん(31)=岐阜市出身、愛知県豊橋市在住=は、「性器も大切な体の部位の一つ。女性の体を正しく理解し、ポジティブに捉えるためにも、抵抗感なく使える言葉を獲得することは非常に重要」と、この議論を歓迎する。一方で、「現在の社会において、男性器に比べ、女性器(を呼ぶこと)はタブー感が桁違いだ」と指摘する。

 理由の一つとして「女性器は男性器と比べて『分かりにくい』」ことを挙げる。男性器は体の前面から突出していて、自他ともに存在を意識、確認しやすい。一方、女性器は子宮や膣(ちつ)など体の内部に入り込んでいる部分が多く、女性自身でも、自分の性器の状態を直接確認するのが難しい。このことが「隠された器官」「秘められた部位」という印象を強めている―と考える。

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乳幼児のデリケートゾーンについて保護者向けに講座を開く岡田百合香医師(右奥)=今年4月、岐阜市内

 また、「性や性器の話は口にすべきではない」という性への過度なタブー意識も問題とみる。特に男性優位社会の中で「女性が性器の名前を口にすることに対し『品がない』『貞操観念が乏しい』などとネガティブに捉える風潮がある」。そのため、子どもに性器の名前をどう伝えるべきかについても「重要な問いでありながら、議論すらできない空気がある」と嘆く。

 雨宮さんの「おまんまん」のように、親子で親しみやすい名前を使うことは全く問題ないとする一方、「家庭内で使える環境を整えても、社会が環境を整えられていないことが一番の問題」と強調する。「性器だけヴァギナやペニスなど外来語を勧める理由がないし、陰茎や陰唇では堅すぎる。『まんこ』のような、本来はポジティブな意味合いを持った性器の呼び方なのに、男性目線のエロで色づけられた言葉の誤ったイメージを変えるか、諦めて新しい言葉を生み出すしかない」と捉える。

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 「性教育の現場では、いつも大人側の行動や考え方を変える必要性を感じる。われわれ大人が性器の名称を口に出すことをタブー視しないこと。そして、どのような名称を使うのがいいか、皆で議論していくことが大事」と呼び掛ける。

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