カゴメ株式会社(代表取締役社長:奥谷晴信 本社:愛知県名古屋市)は、熊本県農業協同組合中央会および熊本県厚生農業協同組合連合会との共同研究において、血圧管理に関する食事情報の提供と野菜飲料の提供による環境整備が、勤労者の尿ナトリウム/カリウム(Na/K)比や野菜摂取、行動変容ステージに及ぼす効果を検証しました。その結果、食事情報の提供は行動変容ステージの改善に寄与し得る一方、尿Na/K比等の身体的指標の改善には、野菜飲料の提供に代表される環境面からの支援を組み合わせることが有効である可能性が示唆されました。本研究成果は、2026年5月に開催された第80回日本栄養・食糧学会大会で発表しました。
■ 発表のポイント
- 勤労者を対象に、対照群(特段の介入を行なわない群)、介入群1(情報提供のみを行う群)、介入群2(情報提供に加えて野菜飲料を提供する群(※任意摂取))の3群に分け、12週間の介入試験を実施しました。
- その結果、介入群1、2の両群において、血圧管理のための食事を実践している人(行動変容ステージの「実行期」「維持期」)の割合が有意に増加しました。
- 尿Na/K比は、介入群2が介入群1と比較して有意に改善しました。また、野菜摂取レベルは、介入群2が対照群および介入群1と比較して有意に改善しました。
■ 研究の背景
高血圧の予防には食塩(ナトリウム)の摂取量を減らすことと、ナトリウムの排泄を促すカリウム(野菜や果物に多く含まれる成分)を積極的に摂取することが大切です。近年、これらの摂取状況を反映する「尿Na/K比」が血圧管理の新たな指標として注目されています1)。
先行研究2~4)において、特定の食環境整備によって尿Na/K比が改善することが報告されていました。この度、3者協力のもと、野菜飲料を用いた環境整備を行うことによって、尿Na/K比等が改善するかを確認しました。
※本研究において、ナトリウムとカリウムを合わせた略称として、「ナトカリ」という語を用います。
■ 研究の方法
JAグループ熊本の職員274人を対象に、層別ランダム化並行群間比較試験*1を実施しました。参加者を、特段の介入を行わない「対照群」、ナトカリに関する動画の配信やナトカリマップ(R)*2の配布による情報提供を行う「介入群1」、その情報提供に加えて野菜飲料を配布(※任意摂取)する「介入群2」の3群に分け、12週間の介入を行いました。介入前後に、尿Na/K比、ベジチェック(R)*3による野菜摂取レベルなどを測定するとともに、質問票により、ナトカリを意識した食事をすることに対する行動変容ステージを評価しました。
■ 研究の結果
1.行動変容ステージの改善
ナトカリを意識した食事をとることに対する行動変容ステージについて、「実行期」または「維持期」と回答した者の割合は、情報提供を行った介入群1および介入群2の両方において有意に増加しました。つまり、ナトカリを意識した食事をとるようになった人の割合が増えました。

図1 介入前後の行動変容ステージの分布
2.尿Na/K比と野菜摂取レベルの改善
野菜飲料の配布を併用した介入群2において、情報提供のみを行った介入群1と比較して尿Na/K比が有意に低下(改善)しました。また、介入群2の野菜摂取レベルは、対照群および介入群1と比較して有意に上昇(改善)しました。

図2 尿Na/K比、野菜摂取レベルの介入前後での変化量
■ 学会発表情報
- 演題名: 「ナトカリ」の情報提供や環境整備が尿Na/K比や野菜摂取に及ぼす効果の検証
- 大会名: 第80回日本栄養・食糧学会大会(2026年)
- 著者: 清水友紀子、井上拓郎、高群翔太、西村孝太郎、大田黒智教、瀬井秀樹、田尻裕樹、大西康太、吉田悠、鈴木重徳
■ 参考文献
1) 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版株式会社. 2025;303p.
2) Umeki Y, Hayabuchi H, Adachi H, Ohta M. Feasibility of Low-Sodium, High-Potassium Processed Foods and Their Effect on Blood Pressure in Free-Living Japanese Men: A Randomized, Double-Blind Controlled Trial. Nutrients. 2021;13:3497.
3) Sakaguchi K, Takemi Y, Hayashi F, Koiwai K, Nakamura M. Effect of workplace dietary intervention on salt intake and sodium-to-potassium ratio of Japanese employees: A quasi-experimental study. J Occup Health. 2021;63:e12288.
4) Kawabata T, Nakamura M, Takemi Y, Hayashi F, Yamada T. Impact of a nudge-based food environment intervention in a hospital convenience store on staff's food intake and Na/K. BMC Nutr. 2024;10:113.
■ 注の解説
*1 層別ランダム化並行群間比較試験
年齢や性別など、結果に影響を与える可能性のある条件で参加者をあらかじめグループに分けます(これを「層別」と言います)。その上で、それぞれのグループの中で介入(食品摂取や治療など)を受ける群と受けない群とに無作為に分け、介入効果を比較する試験方法です。食品や成分の効果を客観的に評価するための信頼性の高い方法とされています。
*2 ナトカリマップ(R)
ナトカリを意識した食事をすることをサポートする啓発ツールです。様々な食事のナトリウム量、カリウム量、およびナトカリ比が視覚的に分かります。
https://www.kagome.co.jp/company/nutrition-health/natkalimap/
*3 ベジチェック(R)
自身の皮膚カロテノイドレベル、および推定野菜摂取量が約30秒でわかる機器です。センサーに手のひらを押し当てるだけで結果が分かります。
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