パドックから返し馬に向かうボッチョ&松本一心騎手(左)、スティルアイライズ&丸野勝虎騎手
「ボッチョ頑張れ、ボッチョ~」と最後の直線で声援が飛んだ。JRAから笠松に転入した人気馬ボッチョが1着でゴールを駆け抜けると「勝ったー」と大歓声。ラチ沿いやスタンドに詰め掛けたファンたちを喜ばせた。馬名はイタリア語で「つぼみ」を意味し、初勝利で鮮やかな大輪を開花させた。
10月に入って秋晴れ、良馬場となった笠松競馬場。初日3Rは「好きです笠松競馬」の冠協賛レース。同じ牧場生まれのアイドルホースで新コンビ2頭が「共演」した。スティルアイライズ(愛称・まめちゃん)とボッチョの3歳牝馬で共に川嶋弘吉厩舎に所属し、松本一心騎手が主戦を務めてきた。今回は同じレースで一緒に走った笠松の注目馬2頭を特集した。
まめちゃんに続き、ボッチョも「仔馬カメラ」で誕生から成長までが配信され、多くのファンに温かく見守られてきた。中央競馬では9着が最高で4戦未勝利。一口馬主のクラブ馬だったが今年6月にJRAの登録を抹消され、個人馬主の所有馬となった。
おそろいのメンコ姿で馬道からパドックに向かうスティルアイライズ(4)とボッチョ(5)
ボッチョは父オルフェーヴルと同じ栗毛で、母はブラーノ(未勝利馬)。愛らしい馬名はイタリアのブラーノ島でこれから咲く花のつぼみをイメージして名付けられた。 誕生日は2023年2月23日で「オグリの里1聖地編」の創刊日でもあり、親近感がより増した。
■松本一心騎手はボッチョに騎乗、まめちゃんには丸野勝虎騎手
笠松移籍初戦(9月11日)が6着、2戦目はクビ差の4着で、たたき3走目を迎えたボッチョ。馬体重はマイナス5の430キロで単勝3番人気。5番枠で、4番枠のまめちゃんとのワイド馬券や2頭の単勝、複勝もよく売れており、応援するファンたちは「私たちの組織票です」と好走を願っていた。
同じレースに出走したアイドルホース2頭。1周目ゴール前で、スティルアイライズ(4)とボッチョ(5)
人気馬2頭の主戦・松本一心騎手はボッチョに騎乗した。笠松10戦目のまめちゃんには丸野勝虎騎手が初騎乗し、積極策で好ダッシュ。ボッチョは中団から追う展開。渡辺竜也騎手が騎乗し断トツ人気のイニシオと赤津和希騎手(期間限定騎乗)のコンダクトヲハラエの2頭がハナを激しく争い、前つぶれの展開となった。
■ボッチョ、ラスト100を切って豪快に差し切りⅤ
ボッチョはインからポジションを上げて、4コーナーでは外に出して3番手。シャドーロールを装着した鼻先の流星を揺らしながら追撃態勢。この段階で前の2頭とは2馬身ほどあったが、馬券圏内の「3着はあるな」という位置に進出していた。
松本一心騎手の好騎乗で前の2頭を差し切り、ボッチョが1着でゴールイン
ラスト100を切って、前の2頭が内でいっぱいになるとラストの伸び脚が際立ち、豪快に差し切りⅤを決めた。タイムは1分32秒5で2着のコンダクトヲハラエに1馬身半差。パドックなどでテンションが高く、今回はシャドーロールと、口が開くのを防ぐ「クロス鼻革」を装着しレースに挑んだ。その効果もあったのか集中力が高まったようで初勝利をゲットした。
■ボッチョ推しのファンが大歓声、感激の涙も
「ボッチョ、ボッチョ」と連呼するラチ沿いの女性ファンらに背中を押されたかのように「主演女優」となった3歳牝馬は一気に突き抜けた。「まさか? 期待以上?の1着」に驚き、ゴールの瞬間は歓声が最高潮に達した。「勝った」「やった」と女性グループが輪のようになって初勝利の喜びに浸り、感激の涙も流していた。
鋭い差し脚で待望の初勝利を飾ったボッチョと松本一心騎手
「まめちゃん&ボッチョ」の強力タッグでファンを沸かせたこのレース。まめちゃんがスタート直後は一瞬先頭に立ってハイペースを演出したのか。前の2頭は最後バッタバタになった。「好きです笠松競馬」のレース通り、C級でも笠松愛にあふれた一戦となった。
JRAでは完敗続きで「つぼみ」のまま登録抹消となった小さな牝馬ボッチョが、笠松で華麗に開花。大ベテラン川嶋弘吉調教師の厩舎スタッフに愛情を注がれて、強いレース内容で立派に成長した姿を見せてくれた。
■一心騎手「攻め馬の感触でボッチョの方が走りそうな感じ」
レース直後、松本一心騎手に喜びの声を聞いた。まめちゃんとボッチョが同じレースで直接対決。「どっちに乗ろうか迷ったんですけど、攻め馬の感触でボッチョの方が走りそうな感じがしたんで」と騎乗の決め手になった。
ボッチョを勝利に導いたレース後の松本一心騎手
調教から両馬に乗っている一心騎手。ボッチョは前走4着でまあまあだったが「たたいてたたいて追いっ放しの4着だったんで。今回は変わってくれるかなあと」。休み明けから「たたき3走目」を迎え、状態ピークで勝負気配の一戦になった。
■「前の馬に付いていくだけ、道中の雰囲気が良かった」
レースプランはあったのか。「もうとにかく前の馬に付いていくだけでした。たたいた分、道中の雰囲気が良かったですね」。渡辺騎手騎乗で大外の馬が人気を集めていたが、ボッチョはラストですごく伸びた。「まあ(前が)結構流れたんで、展開が向いたというのもあって」
ボッチョを管理する川嶋調教師にはレース前、何も言われていなかったそうだが、勝ったレース映像を一緒に見ながら、先生には「併せ馬していたからかなあ」と言われたそうで「2歳馬と併せ馬をしていて、たたいた上積みが大きかったです」と会心の勝利になった。
「ボッチョがしっかり走ってくれました」と喜びに浸る松本一心騎手
■ゴールインでは「『キャー』みたいな声が聞こえた」
ゴールインではすごくファンが喜んでいたが「良かったです。『キャー』みたいな声が聞こえました」とにっこり。まめちゃんは残念だったが、選んだ方が来て「良かったです」。
アイドルホース2頭の騎乗を調教から任されていた一心騎手。今回は、出走登録の段階で「どっちに騎乗するのかな」とファンも注目していて「究極の選択」にもなったが、勝利という最高の結果をもたらしてくれた。
■「展開が向いて、しっかり走ってくれた」ボッチョの頑張りに感謝
前走4着と好走したが最後は3着馬に差され、勝ったレースでも強い馬がいた。「まだ順番じゃないなあ」と思っていたそうだが、勝因は「前が流れて展開が向いたし、馬もしっかり真面目に走ってくれました」とボッチョの頑張りに感謝した。場内では結構馬券を買っているファンも多く「勝てて良かったです」。
初勝利を挙げた後、装鞍所内を周回するボッチョ。今回はシャドーロールとクロス鼻革を装着して挑んだ
レース内容や状態もだんだん良くなってきて、この日の脚が使えれば今後も期待できそうだ。今回、まめちゃんにも騎乗できたが「賞金的に同じレースになっちゃったんで、かぶっちゃいました」と番組賞金の面で直接対戦することになったが、結果的には最初で最後の?共演も実現した。
ボッチョは勝って賞金が上がったのでクラスも上がり、次の一戦は別々のレースになりそうだ。そうなれば、一心騎手が再びまめちゃんに乗る可能性も高い。
「おめでとう。また頑張って」。レース後に初勝利を祝う口取り撮影は見掛けなかったが、装鞍所のサークルを周回しながら呼吸などを整え、馬体を落ち着かせるボッチョの姿があった。
ラチ沿いでスティルアイライズを撮影するファン
■丸野騎手は人気馬とは知らず「無事完走で良かったです」
一方、まめちゃんに初騎乗した丸野騎手に「人気馬でしたよ」と伝えると「(レース内容は)全然駄目でしたが、人気のある馬なんですか、知らなかったです」と意外だった様子。引退後のサポートが決まっている馬でもあり「じゃあ無事完走できて良かったですね」とホッとした笑顔も見せてくれた。
たとえ勝てなくても、ハルウララのように連敗記録を続けて人気になる馬もいるし、丸野騎手も「何が人気出るか分からないですね」とも。名古屋では19歳の誕生日まで走り続けたヒカルアヤノヒメというスターホースもいた。この日は一心騎手がボッチョに乗ったため、丸野騎手がまめちゃん騎乗となったが、ベテランらしく無理をさせずにゴールに導いてくれた。
■ファン「みんなもすごく泣いていた。まめちゃんにはまた一心君に乗ってほしい」
ゴール前のスタンドにはスティルアイライズとボッチョを応援する横断幕が計11枚も掲示されて、ファンたちの推し馬への熱い思いが場内に充満していた。
ゴール前のスタンドにはスティルアイライズとボッチョを応援する横断幕が計11枚も掲示された
まめちゃんや松本一心騎手推しのファンは、勝ったボッチョについて「良かった。最後よく追い込んで。みんな泣いていましたよ。3着には入るなあと見ていたら、そこからがすごかったから。みんなもワーワーすごかった」
「ボッチョが勝ってみんな一心君に感謝していた。まめちゃんにはまた一心君に乗ってもらいたいし、まずは掲示板、そして3着までに入ってほしい。涼しくなってもう少し頑張ってくれるといいが」
ファンの熱い視線を浴びるスティルアイライズ。清流ビジョンにはボッチョの姿も
「一心君、よく1着にもってきましたね。あのレース『渡辺騎手が1400勝を決めるレースだろう』とみんな言っていましたが『ボッチョと一心君は合いますねえ』という声が多かった。2頭の横断幕もいっぱい出ていましたし、みんな歓喜の輪になったりしてましたね」
■「同じレースでゲート隣同士、こんな奇跡はもうないかも」
ネット上でも祝福の声があふれた。
「ボッチョおめでとう。カッコよかった。まめちゃんも頑張った。同じレース、ゲート隣同士、こんな奇跡はもうないかも」
「素晴らしい末脚で見事に差し切り快勝! とても強かったですね」
「23年組の勝利を初めて現地で見て涙出た」
「まめちゃんスタート良かったよ。ゆっくり休んでね」
パドックでジョッキー到着を待つ間、見つめ合う仲良しのスティルアイライズ(左)とボッチョ
「まめちゃん&ボッチョ」。同厩舎での強力タッグもあって、ボッチョは笠松3戦目で待望の初勝利を飾った。クラスはやや上がるが、今後にも期待を持てそうで次走以降、視界良好となった。スティルアイライズは厳しい戦いとなっているが、まずは無事完走を。そしてどこかで「まめチャンス」が巡ってくると信じて、応援を続けていきたい。
☆ファンの声を募集
競馬コラム「オグリの里」への感想や要望などをお寄せください。 騎手や競走馬への応援の声などもお願いします。コラムで紹介していきます。
(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里5青春編」も好評発売中

「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」「4挑戦編」に続く第5弾「青春編」では、笠松競馬場などでの「砂上の格闘技」で完全燃焼した人馬たちへの惜別の思いも込めた。巻頭はシンデレラグレイ賞&トークショーでのウマ娘ファンの熱狂ぶり、続いて日本競馬界最大のヒーローであるオグリキャップ、アオラキ&ハルオーブ、ストーミーワンダー、ハマちゃんなどを特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、182ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、笠松町歴史未来館、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品。









