むんとした窯の熱気に包まれ、機械音が響きわたる工場内。頭上には未完成の器を乗せたゴンドラがゆっくりと動いている。毎日の食卓に欠かせない多種多様な器を生産している岐阜県多治見市下沢町の丸半製陶所を、7代目の柴田武司社長(57)に案内してもらった。
器づくりはまず土づくりから。製土メーカーから仕入れたオリジナルブレンドの粘土を、水と混ぜ合わせて「真空土練機」という機械に投入し、空気を抜きながら1メートルほどの棒状に加工する。水の分量は作りたい製品の固さに応じて調整していて、目安となる数値はあるものの、日々の気温や湿度に合わせた職人の感覚が工程を支えている。
粘土を薄く延ばして器を形づくるのはローラーマシンと呼ばれる成形機が担う。ほぼ全自動で機械化されているが、原理は陶芸体験などで私たちが使うろくろと同じ。器の形をかたどった石こう型の中に、必要な大きさに切り分けられた粘土を入れ、そこをめがけて高速で回転する金属のこてを押し当てる。ものにもよるが、10秒ほどで1ピースが成形されるという。マグカップなどの取っ手は成形後に一つ一つ人間の手でくっつけている。
焼成は素焼きと本焼成の二手間をかける。約800度で行う素焼きには、土から水分を飛ばし、吸水率を高めて釉薬(ゆうやく)が器にのりやすくする効果や、扱いやすいよう若干の強度を高める目的がある。柴田社長は「素焼きを省く事業者もあるが、よりいい物を作ろうと思うと手をかける必要がある」と説明する。
釉薬がけを終えたらいよいよ本焼成に。最高で約1250度になる30メートル超のトンネル窯を通し、1日かけて焼き上げる。窯から出てきた製品は人の目で一つ一つ検品され、上絵付けの業者やエンドユーザーのもとに運ばれていく。
製陶所では定期的に器の分厚さや重さを計測し、図面と照らし合わせるなどして品質管理を徹底する。柴田社長は「(同業者から)やらなくても誰も気付かないと言われることもあるが、真面目に正直に、少しでもいいものを作って喜んでもらいたいという思いが強い」と語る。慢性的な人不足の中、コロナ禍で注文数が落ち込んだ時は「廃業」の2文字が頭をよぎり弱気になったこともあったが、「今はそんな気持ちは吹っ切れた。規模を縮小してでも、お客さまの希望により沿った自社製品を作り続けていきたい」と力を込める。
【工場概要】江戸時代の創業。現在の工場は1984年に操業開始。建築面積は約3300平方メートル。マグカップやディナープレートなど、ありとあらゆる一般家庭用食器を生産。生産量は最盛期で月間約100万ピースあったが、現在は多くても月間20万ピースほどという。自社製品と相手先ブランドによる生産(OEM)の比率は半々程度。工場の従業員はパートを含め約10人。多治見市下沢町。











