マンション8階の出窓下にある蜂の巣。白い物体に、無数のミツバチが群がっている=岐阜市竜田町
蜂の巣ができたマンションの最上階を指さす大家の安藤庸子さん=岐阜市竜田町

 マンションの8階に、ミツバチが巣を作った-。「岐阜新聞 あなた発!トクダネ取材班」に、岐阜市の50代女性から情報が寄せられた。女性は、そのマンションの所有者で「こんなことは初めて。これほどの高所に巣を作るのは珍しいのでは」と驚いている。蜂だけに8階に? そもそも、どのぐらいの高さまで飛べるのだろうか。養蜂のプロにミツバチの生態を聞いた。

◆8階出窓下に無数の蜂

 今月上旬、同市中心部。女性が所有するマンションを訪れると、確かに8階の出窓下に丸い物体がぶら下がっている。デジタルカメラをズームにして画面越しに確認すると、その正体は無数の蜂。ミツバチによく似た蜂が巣と思われる白い物体に群がり、体を寄せ合って動いている。巣の大きさは幅30センチほど、巣までの高さは地上から25メートルほどだろうか。

 情報を寄せてくれたのは安藤庸子さん(57)=同市九重町=。安藤さんはこのマンションの大家で、6月中旬に管理会社から連絡を受けて蜂の巣ができていることを知った。最初に気付いたのは7階の住人。6月に入った頃、窓の外を蜂の大群が渦を巻くように飛んでいた。何度か同じ光景を目にしたため、不思議に思って窓から上を見ると蜂の巣があった。安藤さんは管理会社を通じて駆除業者に相談中。取り除く予定だが、その生態に興味を持って情報を寄せたという。

 8階の部屋は現在、空き部屋になっている。昨年春に30年以上住んでいた老夫婦が退去していた。その出窓からは、金華山周辺の緑が望める。「マンションを建てて約35年。こんなことは初めて。物音がなかったからでしょうか」と安藤さんは首をかしげる。

◆養蜂のプロ秋田屋本店「高所で飼われていた可能性」 

 養蜂・食品製造の秋田屋本店(同市加納富士町)に尋ねると、養蜂に詳しい後藤眞人常務(69)と養蜂部の小野木正春副部長(50)がミツバチの生態を教えてくれた。両氏に写真を見てもらうと、巣を作ったのはミツバチだとした上で「養蜂で飼われるセイヨウミツバチではないか」という。

 ミツバチの巣には1匹の女王蜂とたくさんの働き蜂が暮らしているが、働き蜂が増えて新しい女王蜂が生まれると、旧女王が一部の働き蜂を引き連れて引っ越しをする。これを「分蜂(ぶんぽう)」と呼び、養蜂家が人工的に管理している場合は巣箱を増やすことで対処できるが、管理が間に合わないと自然界に飛び立つことがあるという。同市内では趣味で養蜂を楽しんでいる人もいるといい、「そこから分蜂した可能性もある」と指摘する。

 高所に巣を作ることはあるのだろうか。東京・銀座や名古屋市中心部などではビルの屋上で養蜂が行われているといい、「11階のベランダまで上がったという研究報告もある。高さ自体は不思議ではないが、珍しいことは珍しい」と話す。通常は、建物の軒下や街路樹など地上付近の人目につかない場所に巣を作るため「下から急に上がることは考えにくい。元々、同じような高さの場所で飼われていたのでは」と推測する。

 安藤さんは「蜂は刺すのでいいイメージを持っていなかったが、ミツバチは子だくさん、蜂蜜も金色で縁起がいい。末広がりの『八』を連想し、8階にできたことも驚き。悲観的にならないようにしたい」と前向きに捉えている。

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