食品などの値上げに関し「国内農業の生産性に目を向けるきっかけになる」と語る髙木健一社長。広大な農地で米や麦などを作る=6月27日、海津市海津町

 7月10日の投開票に向け論戦が繰り広げられている参院選。さまざまな課題に直面する地域で、国の支えや政治の決断を望む岐阜県民の声に耳を傾け、今求められることを有識者に聞いた。

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 身近な食卓を守るための安全保障「食料安全保障」が注目されている。海外リスクの影響で止まらない食品値上げには、国産品の供給を増やす食料自給率の向上が解決策の一つだ。しかし、国内の食料自給率は低下傾向にあり、カロリーベースで4割に満たない。底上げに向け鍵を握る農業の現場も、肥料や飼料などを海外に依存しており、円安進行も相まって輸入物価の高騰にさらされている。県内の生産者は地元産堆肥を活用するなど打開策を探るが、こうした循環型農業の確立に向けては課題も多い。

 県内有数の穀倉地帯で、優良な農地が広がる海津市。大手外食チェーンなどに米を販売する同市のサンフレッシュ海津は、広大な農地を生かして大規模農業を営む。髙木健一社長(48)は「食品や物価の値上がりは、国内農業の生産性に目を向けるきっかけになる」と見る。

 同社などが作物を栽培する海津市は、2021年3月末現在で営農組合などの団体への田畑の集積率が70%を超え、県内全域の37・8%と比較しても大きい。大規模な区画で整備された農地で大型機械も導入され、生産効率が高い。米どころと言われるゆえんだ。

 しかし同社は今年、米の作付面積を昨年の約120ヘクタールから半分に減らし、小麦と大豆をそれぞれ約70ヘクタールから約130ヘクタールまで増やした。髙木社長は「新型コロナウイルスの影響で外食の需要が減ったことが要因。今ニーズがあるものを作っていく」と話す。

 コロナ禍の影響に加え、家計と同様に値上げの波は農業者にも押し寄せる。ロシアのウクライナ侵攻の影響で肥料価格は6月から、前月比で約1・5倍に上昇。資材や原油価格も高騰が続く。農業の生産コスト上昇を抑えるべく、政府は燃油や飼料、肥料のコスト増に対し支援を打ち出す。JA全農も肥料原料の調達先を多元化するなど対策に力を入れるが、原油の値上がりで輸送経費も増加し、先行きは不透明感が漂う。

 同社は今年から、飼料用トウモロコシの栽培に乗り出す。地元畜産農家に販売し、家畜のふんを堆肥にする計画で、輸送コストを最小限に抑えて環境負荷を減らし、地域で循環する農業に挑戦する。同様の取り組みが広がれば、家畜飼料が国産になることで食料自給率向上につながり、輸入する肥料原料への依存も減らせる。しかし、流通や備蓄を支えるインフラ、堆肥作りの施設整備など大規模な投資も必要。「短期的な支援も必要だが、若い農業者の中長期を見据えた取り組みを可能にする支援も、国には求めたい」と髙木社長は話す。

 農林業に関する調査やコンサルティングを手がけるOKB農林研究所(大垣市)の笠井博政所長は「顕在化していなかった食料供給のリスクがあらわになったといえる」と現状を分析。「手間はかかるが、循環型農業は食料安全保障にもつながる」と普及の必要性を指摘した。

 【食料自給率】 国内の食料の供給に対して、国内で生産された食料の割合を示す指標。長期的に低下傾向が続き、2020年度はカロリーベースで37%と過去最低の水準まで下がった。生産額ベースでは67%。食生活の変化により、自給率の高い米の消費が減少していることなどが要因とされる。畜産物は、輸入飼料を使って国内で生産した分は国産には算入しない。政府は30年度までにカロリーで45%、生産額で75%まで高める目標を掲げる。19年度の都道府県別で、岐阜県(カロリー)は25%。