一部区間が開通している濃飛横断自動車道。早期整備が求められている=6月20日、下呂市金山町乙原

 7月10日の投開票に向け論戦が繰り広げられている参院選。さまざまな課題に直面する地域で、国の支えや政治の決断を望む岐阜県民の声に耳を傾け、今求められることを有識者に聞いた。

 日本三名泉の下呂温泉があり、豊かな自然に恵まれた下呂市。2020、21年と豪雨に見舞われ、大動脈の国道41号が被災して一時通行止めとなり、観光や産業に影響を受けた。災害時の交通確保に期待が懸かるのが、同市を経由する形で計画されている地域高規格道路の濃飛横断自動車道だ。国が推進する国土強靱(きょうじん)化の予算も充当し一部区間で建設が進むが、開通したのは全体計画の約1割にとどまり、関係者からは早期整備を求める声が上がる。

 「国道41号の通行止めにより観光客から敬遠された。工業製品の出荷でも、納期を守れなくなった」。下呂商工会の中川正之会長は2年続けて発生した豪雨災害の影響を振り返る。「中山間地の安心・安全のためには、災害に強い道路が欠かせない」と国に道路整備の後押しを求める。

 下呂市内には高速道路のインターチェンジ(IC)がなく、市外のICから下呂温泉へは車で約1時間~1時間半かかる。温泉街の宿泊施設関係者は「お客さまから『遠い』と冗談交じりにお叱りを頂いたこともある」と明かす。アクセス向上を望む観光関係者の声は強い。

 濃飛横断道は郡上市から下呂市を経て中津川市へと至る全長約80キロで、事業主体は県。構想が浮かんでから数十年がたつ。12年に下呂市内の5・4キロ、16年に同市金山町と郡上市和良町間の2・7キロが開通。計8・1キロが供用開始され、東海北陸道郡上八幡ICから下呂温泉街までは約25分短縮された。

 しかし、この区間には郡上市の堀越峠という難所が残る。高低差約300メートルで急勾配と急カーブの狭い道が続き、雨量規制による通行止めも頻発。濃飛横断道の堀越峠工区(5・9キロ)が完成すれば移動時間は短縮され、寸断の心配もなくなる。

 同工区は高度な施工技術が必要とされ、県や濃飛横断自動車道事業促進期成同盟会は、国が代わって工事を行う権限代行による事業化を求める要望を重ねてきた。3月に国土交通省は権限代行実施検討のための調査を行うと発表。同盟会会長の山内登下呂市長は「市民の悲願。大きく前進した」と喜んだ。ただ、事業化決定はまだで、工区の開通時期は示されていない。

 岸田文雄首相は1月の通常国会の施政方針演説で「5年間で15兆円規模の集中対策を進め、国土強靱化を強化する」と表明した。濃飛横断道は、中津川市で中央道やリニア中央新幹線岐阜県駅(仮称)を結ぶ中津川工区5・0キロが事業化。国土強靱化の予算は同工区に充てられているが、堀越峠工区を含む道路全体の整備にどこまで国の後押しが得られるかは見通せない。

 防災や基盤整備を研究する岐阜大社会システム経営学環の髙木朗義教授は、「道路整備の効果は平時と災害時の両面を考慮し、住民の不安感など数値で測りにくい要素も含めて検討されるべきだ」と語り、中山間地の命綱となる交通確保への配慮の必要性を訴える。「国は地元の声をよく聞いてインフラの整備を進めてほしい」と願った。