笠松で重賞勝利を挙げた佐藤友則騎手。南関東での期間限定騎乗にも挑戦中だ

 笠松のエース・佐藤友則騎手が期間限定騎乗(2カ月間)で南関東へ旅立ち、ナイター競馬などで連日奮闘している。7日現在、まだ初勝利には届いていないが、「友さん、焦るなよ!」と応援する笠松のファン。新たな挑戦を温かく見守りながら、ゴール後の「友則スマイル」を待っている。

 佐藤騎手は大井の赤嶺本浩厩舎に所属。四つの競馬場があり、コース形態など不慣れな環境。笠松や名古屋とは違う南関東ならではの競馬に、新人ジョッキーのような苦労も味わっているようだ。8月27日から大井、船橋、浦和を転戦。49戦して2着3回、3着が5回。騎乗数はまずまずだが、上位人気馬は少なく、新天地での厳しさに戸惑いもあるようだ。

「焦るなよ!」のポーズを決める佐藤騎手。笠松のエースとして南関東でも存在感を示したい


 笠松での壮行セレモニーでは「初めてのことですし、慣れない環境で不安ですが、頑張ってきます」と闘志。既にJRAでは数多く騎乗し、地方競馬は全場で参戦しており、全国レベルの騎手である。やや苦戦気味の序盤戦だが、プロレスファンでもある自らに「トランキーロ(スペイン語、プロレス用語で『焦るなよ!』の意味)」と言い聞かせていることだろう。持ち前のポジティブさを前面に押し出して、立ちはだかる南関東の「厚い壁」にチャレンジしてほしい。ちなみに笠松には、トランキーロ(笹野博司厩舎)という馬もいて、佐藤騎手も騎乗経験がある。

今年の東海ダービーにも挑んだ佐藤騎手

 南関東では、人気のない馬での騎乗が続きそうだが、JRAでの初勝利も27戦目だった。10年前の阪神競馬場で、最低16番人気のクイックリープに騎乗して1着ゴール。単勝4万7360円の万馬券で大波乱を呼んだ。そろそろ南関東でも、ファンや他のジョッキーをアッと驚かせるような好騎乗を見せてくれるだろう。笠松をはじめ全国の友則ファンは、今後の爆発力を信じて応援馬券をネットで購入しているかも...。


 競走馬のレベルや賞金も高い南関東には、全国の各地方競馬のトップジョッキーが期間限定騎乗で挑戦。今年も金沢の吉原寛人騎手、高知の赤岡修次騎手、愛知の岡部誠騎手ら各地のリーディング常連が参戦し、結果を残しており、佐藤騎手も「少しでも追い付きたい」という気持ちが強い。
 
 かつて、笠松時代のアンカツさん(安藤勝己元騎手)が「南関東で乗りたいね」と話していたが、笠松からは、これまでに東川公則騎手が2度挑戦。2カ月間の150戦ほどで、それぞれ5勝、7勝を飾っている。笠松ゆかりのジョッキーでは、アンミツさん(安藤光彰元騎手)の長男・安藤洋一騎手が大井に所属。笠松の騎手として191勝を挙げた後、大井で調教師補佐をしていた阪上忠匡さんは、今年3月に騎手免許を再取得。川崎に所属し、将来は調教師を目指しており、今も笠松の騎手とも親交を深めている。

 また、南関東には名手が多く、地方騎手通算「7152勝」の新記録を達成した的場文男騎手や、今年の南関東リーディングを突っ走る森泰斗騎手(5年前、ラブミーチャンで習志野きらっとスプリント勝利)らとのレースでは、佐藤騎手も大いに刺激を受けていることだろう。

 この夏、「笠松の佐藤としてアピールしたい。何かを得て帰ってきて、地元の騎手にも伝えていきたい」と話していた佐藤騎手。南関東での調子も徐々に上がっており、自らの成長と笠松の活性化を願いながらチャレンジを続けていく決意だ。友則パワー全開で闘志あふれる笠松魂を発揮して、「南関突破」といきたいところだ。

ラブミーボーイで通算2700勝を達成した東川公則騎手。南関東での2度の期間限定騎乗では、12勝を飾っている

 笠松の9月開催では、8月よりジョッキーが3人減ってしまった。佐藤騎手が南関東に参戦したほか、高橋昭平騎手が笠松での3カ月間の期間限定騎乗を終えて大井へ戻った。また、水野翔騎手が調教中の落馬で鎖骨を骨折。地元での騎乗のほか、ヤングジョッキーズシリーズ佐賀ラウンドへの参戦を取りやめた。騎手変更で、佐賀へは渡辺竜也騎手が2レースに挑むことになった。水野騎手の巻き返しを期待していたが残念。10月の名古屋ラウンドには何とか復帰して、2人そろってファイナル進出を狙ってほしい。

 再び浮上した騎手不足の問題。7日の笠松開催では、筒井勇介騎手、森島貴之騎手、大原浩司騎手が11レースずつ騎乗。ベテラン勢の東川騎手が9レース、大塚研司騎手は10レースで騎乗するハードさ。苦しい時の「名古屋頼み」で、岡部誠騎手や丸野勝虎騎手の騎乗も増えた。各騎手の調教馬の数も増えており、体力的にはきついだろうが、騎乗数が多いことは、うれしいことでもある。結果を残すとともに、けがなどなく秋競馬を乗り切ってほしい。

笠松競馬場内に設置されているオグリキャップの大型パネル

 猛威を振るった台風21号。笠松競馬場内では、正門近くに設置されているオグリキャップの大型パネルが、突風の影響で横倒しになった。場内通路の屋根の一部や椅子なども吹き飛ばされ、コース内には木の枝などの散乱もあったそうだ。他場では、台風の影響で金沢や園田が開催を取りやめた。北海道地震では門別開催が中止になった。笠松では、8月末には落雷の影響で清流ビジョンが故障することもあった。競馬場関係者の努力もあって、5日からの笠松競馬は無事開催できて、まずは良かったが、老朽化が進む施設だけに、崩落事故などの危険性がある。いつ発生するか分からない自然災害に強い競馬場でありたい。