オグリキャップ引退から27年目の奇跡。血統ロマンは生き続けており、この夏(7月30日)、ファンに朗報が届いた。
新潟競馬場の名物レース、直線1000メートルの「アイビスサマーダッシュ」(GⅢ)でのサプライズ。西田雄一郎騎手が騎乗したラインミーティア(水野貴広厩舎)が、キャップの血統を受け継ぐ競走馬として初めて、中央重賞勝利を飾ったのだ。
ラインミーティアは牡7歳で、キャップのひ孫にあたる。父メイショウボーラー、母アラマサフェアリー。祖母がキャップの代表産駒であるアラマサキャップという血統。出走表には、母の父までの血統しか表示されておらず、ノーマークで気付くのが遅れてしまった。
キャップの子孫の重賞成績はこれまで、初年度産駒のアラマサキャップとオグリワンの2着が最高だった。アラマサキャップは、1995年のクイーンS(GⅢ、中山)で2着。オークスは8着で、笠松から挑んだライデンリーダー(13着)とも一緒に走った。キャップの長男オグリワンも重賞勝利はなく、小倉3歳S(GⅢ)で2着だった。
ラインミーティアに騎乗したのは、新潟直線コースを最も得意とする西田騎手。アイビスサマーダッシュの優勝は、7年前のケイティラブ以来2度目で、ともに8番人気での勝利。人馬ともに新潟直線1000メートルのスペシャリストで、最強コンビでの2勝目となった。
レースを振り返ると、ラインミーティアは鋭い末脚で、1番人気フィドゥーシアをゴール寸前、きっちりと差し切った。格上挑戦で胸を借りるつもりだった西田騎手。「オープンでも通用する切れ味があると分かっていた。前の馬の脚も鈍っていたので、しっかり追えば届くと思った。1200メートルでも活躍してほしい」と、今後の走りにも手応え十分。最後のひと脚に懸けたベテランの確かな読みと手腕が光った。
キャップの笠松デビューから30周年。ファンにとっても大きな1勝をプレゼントしてくれたラインミーティア。今後もスプリントの重賞戦線、さらにはGⅠへと夢は広がる。陣営では、9月10日の阪神・セントウルS(GⅡ、1200メートル)を挟んで、10月1日の中山・スプリンターズS(GⅠ、1200メートル)を目標としている。母アラマサフェアリーの産駒は、残念ながらラインミーティアが最後。この牝系の血を途絶えさせないためにも、さらなる活躍で、将来の種牡馬入りを期待したい。
札幌(7月29日)では、94年の桜花賞馬オグリローマンの孫にあたるステイパーシスト(牡4歳、尾関知人厩舎)が阿寒湖特別を勝った。騎乗したのはルメール騎手で1番人気。ゲートで立ち上がり、2馬身ほど出遅れたが、後方2番手から追い上げて楽々と差し切った。重賞勝ちはまだないが、今後十分に狙えそうな走りだった。
かすかな光を求めて、受け継がれてきたオグリキャップの血脈。ラインミーティアの重賞勝利に、ステイパーシストの特別レース勝利と続き、オグリの血が急に騒ぎ始めたかのようだ。キャップの孫たちの活躍も期待されているが、中央で3勝を挙げているストリートキャップは、4月から休養中。大井でデビューから3連勝を飾ったオーロシスネも、このところ未出走。両馬には「もうそろそろ走ってほしい」と願うファンの声も上がっている。
ストリートキャップの母は、キャップ最後の産駒ミンナノアイドルで、5月には芦毛の次男を出産した。現役レースは中央の1戦のみで、騎乗したのが三浦皇成騎手だった。その三浦騎手は、札幌競馬場での落馬事故による大けがで騎手生命が危ぶまれていたが、妻・ほしのあきさんの励ましにも勇気づけられて再起を決意。懸命のリハビリを経て、8月12日、ちょうど1年ぶりに同じ札幌で復帰戦を迎えるという。13日のエルムS(GⅢ)ではドリームキラリ(牡5歳)に騎乗予定。まずは復帰戦での「無事ゴール」を祈るファンも多いことだろう。
14日から5日間開催の笠松競馬。15日の重賞・くろゆり賞(1600メートル)には、地方馬の大将格で復帰戦となるカツゲキキトキト(名古屋、大畑雅章騎手)が参戦し、注目される。名古屋からはヴェリイブライトも出走予定。園田勢は回避馬も出て、トーコーポセイドン1頭のみ。笠松勢は、昨年のくろゆり賞覇者サルバドールハクイ、でら馬スプリント優勝のハイジャ、のじぎく賞Vのアペリラルビーら7頭が迎撃。真夏の笠松で、ハイレベルな戦いが繰り広げられる。15日には、ばん馬(ばんえい十勝)も来場し、ファンとふれあい、歓迎してくれる。