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オグリの里

笠松競馬、ジョッキー9人からの再出発㊤

立ち上がれ、あしたのために=その29



一連の不祥事などで、笠松競馬の所属騎手は9人に減ってしまった(笠松競馬ホームページ騎手一覧)

 昨年以降、笠松競馬のジョッキーはリーディング経験者4人をはじめ計10人が抜けてしまった。残ったのはわずか9人と半減しており、このうち若手の見習騎手が3人含まれている。フルゲートは12頭だが、乗り役の方が少なく、「こんな状況でレースができるのか」といった競馬ファンの声もある。それでも存続のためには、再開当初は少数精鋭で踏ん張って、再出発するしかない。「公正競馬」の徹底ぶりををアピールし、馬券不正購入で失ったファンへの信頼を取り戻していきたい。

 4日間の開催演習後の8月14日、笠松所属騎手1人のコロナウイルス感染がPCR検査で確認された。演習中は、調整ルーム内で一緒に過ごしたり、パドックに向かうマイクロバス内や騎手控室などで濃厚接触の可能性もあった。このため17日、他の騎手8人に対してもPCR検査が実施され、全員の陰性が確認された。見合わせていた朝の調教は18日から再開された。

 金沢競馬では7月末から計9人(騎手4人、調教師2人、厩務員2人、装蹄師1人)の新型コロナウイルス集団感染が確認され、8月10日までの本場開催・場外発売を取りやめた。笠松では感染拡大は確認されず、まずは一安心だが、感染者1人の早期回復と無事復帰を願いたい。クラスター(感染者集団)が発生し、騎手がこれ以上減っては開催ができなくなる。

 9月8日のレース再開日には、笠松の騎手全員が元気な姿で騎乗できるといい。新たに騎手会長となった大原浩司騎手をはじめ、ベテランの向山牧騎手、昨年デビューした深沢杏花騎手、長江慶悟騎手らで、野球ならぎりぎり試合ができる9人。若手も多く、騎乗技術の実力差はあるが、現状では笠松の「ベストナイン」ともいえるメンバーだ。

 「残っているのは誰?」。8カ月間もレースがないと、すっかり忘れ去られていそうなので、9月再開後の「新生・笠松競馬」の顔となるジョッキー9人の戦歴と、再開後の注目ポイント(★)などを紹介する。また「皆さん、一からのスタートとなると思いますので、頑張ってほしいです!」などと熱烈な笠松競馬ファンから寄せられた応援メッセージを「熱視線」としてお届けする。

タッチデュールの主戦を務め、重賞2勝を飾った大原浩司騎手。騎手会長として「新生・笠松競馬」をけん引していく

 ■大原浩司騎手、タッチデュールで重賞2勝(笠松一筋20年、騎手会長に)

 「ゴールした時の気持ち良さが忘れられない」。大原浩司騎手(森山英雄厩舎)は三重県出身の41歳。今年4月から県調騎会の騎手部会長を務めている。笠松一筋に20年。好きな戦法は追い込み。通算350勝、重賞は2勝。思い出の騎乗は初めて勝った重賞レース。エレーヌ、トウホクビジンに続く「鉄の女」とも呼ばれたタッチデュールの主戦騎手として、2011年の笠松デビュー時から騎乗。ジュニアクラウン、プリンセス特別(現ラブミーチャン記念)の重賞2レースを制覇した。

 再開に向けた4日間の「模擬レース」では1着9回でトップタイ。自厩舎のヤマニンパジャッソ(牡3歳)に騎乗し、持ったままの大差勝ちで、再開後注目の1頭になりそうだ。「けがをせずに1年間騎乗すること」を目標に掲げる。自分の性格は「気分屋」だそうだが、フルマラソンやヨガにも挑戦したいとのこと。モットーは「物事をポジティブに考えること」。

 ★一連の不祥事について、騎手会長として「さまざまな人にご迷惑を掛け、申し訳なかった。普段から疑われるような行動をしないよう心掛け、再発防止に努めます」と謝罪し、前を向いた。「公正競馬徹底」に率先して取り組み、レースではフェアプレーの模範を示して、新生・笠松を引っ張っていってほしい。再開後は有力馬に乗る機会が増えそうなので、久々の重賞制覇も果たしたい。

 【熱視線】
 2001年10月16日デビューで、騎手生活20年。今年は騎手会長にもなり、いわば笠松競馬騎手の顔。模擬レースでは好時計を出した馬に騎乗したり、1着を量産していたので、活躍を期待したい。
 
 以前から真面目なイメージと、返し馬の時に外ラチ沿いをゆっくり歩いてくれる印象があって、騎乗馬と共に応援したくなる存在でした。目立つ方たちが引退されて、チャンスだと思うので、リーディングを目指してほしいです。

昨年10月に笠松競馬でデビューした長江慶悟騎手。大けがから復帰し、1月に待望の初勝利を飾った

 ■長江慶悟騎手、自粛前最終日にデビュー初勝利(佐々木朗希投手よりお先に〇)

 「自厩舎の馬で初勝利できたことが一番」。長江慶悟騎手(後藤佑耶厩舎)は愛知県春日井市出身の21歳。勝負服姿が爽やかで昨年10月にデビュー。3日目に落馬事故で大けがを負い、試練を味わった。今年1月に復帰。5番人気のタッチウェーブで逃げ切り。自粛前最終日に待望の初勝利を飾った。「自分がけがをした馬に再び騎乗させてもらい、借りを返すことができた」と厩舎に感謝した。

 中学生の頃、近所の神社で流鏑馬(やぶさめ)をしていた父の姿を見て「かっこいいと思った」と騎手に憧れ、競馬の世界に入った。工業高校時代には機械科で学び、電気工事士の資格も取得。卒業後、乗馬クラブに通い、地方競馬教養センターで2年間学んだ。笠松では午前1時には厩舎から競馬場に来て、攻め馬に励む毎日。目標は「けがをしないことを第一に、騎乗技術の向上に努めること」。体力強化とともに騎乗技術を磨いて「追い込む競馬でも勝ちたい」と闘志を燃やしている。
 
 ★攻め馬でも、元気よく笑顔であいさつをしてくれる好青年。けがで初勝利は遅れたが、自粛前に何とか達成できて良かった。振り落とされた馬で初勝利をゲットする勝負根性も頼もしい。日頃の生活から、大先輩・向山牧騎手らのアドバイスを受けて人間的にも成長。騎手不足で再開後は騎乗機会も増えるから、1勝ずつ積み重ねてファンの期待に応えていきたい。

 【熱視線】
 「ロッテの佐々木朗希投手に似ている」とよく言われる(初勝利は佐々木投手より先でした)。地元の春日井市の「広報・春日井」1月号にインタビューが載っていて、「努力は必ず実る」とある。デビューをしてすぐに大けがをしてしまったが、今年1月、待望の初勝利を挙げた。長江騎手の努力が実りますように。

デビュー3年目で飛躍が期待されている東川慎騎手。豪快な追い込みで、ブレークしたい

 ■東川慎騎手、メイン勝利で鮮烈デビュー(岐阜県出身はただ一人に)

 「勝っちゃったよ。むちゃくちゃ、うれしいです」。東川慎騎手(後藤正義厩舎)は地元・羽島郡出身の21歳。通算41勝。小学生の頃に、笠松競馬場での「じゃじゃ馬ホースショー」のポニーレースに出走し、見事優勝。笠松での騎乗に憧れ、ジョッキーになる夢を実現させた。2019年4月、デビュー日のメインレース「淡墨桜特別」でバレンティーノに騎乗し、鮮やかに差し切り。初勝利を飾ってスマイル満開、喜びを爆発させた。

 レース中の落馬事故で大けがを負って、1年目は6勝だったが、2年目は35勝を挙げて急成長。昨年11月のヤングジョッキーズシリーズ・笠松ラウンドでは3着、2着と健闘。上位を猛追したが1ポイント差でファイナル進出を逃し「また頑張りたい。次は(ファイナルで)JRAのコースで乗りたい」と意欲。「もっと体幹を強くしたい。笠松での乗り鞍を増やして、勝ちたい!」と闘志満々だ。

 ★初勝利のメイン差し切りは鮮烈だった。騎乗馬を勝負どころでよく動かし、騎手としての将来性を感じさせた一戦。けがが目立つため、体力強化が第一。3年目となり、再開後は名門厩舎の期待を背負ってブレークの予感も。まだ荒削りではあるが、持ち前の明るさをレースでも押し出して、好位差しで1着ゴール量産につなげたい。

 【熱視線】
 笠松所属では唯一の岐阜県出身騎手。後輩が2人もできて、負けられないはず。けがをしていたこともあり、今年はまだレースで騎乗していなかったが、再開したら、勝ち星をどんどん増やして笠松競馬を盛り上げてほしい。

昨年4月、笠松競馬では20年ぶりとなる女性ジョッキーとしてデビューした深沢杏花騎手。今度はファンと共に勝利を祝いたい

 ■深沢杏花騎手、涙の初勝利(レース不成立の試練を乗り越えて)

「ホッとして涙が出てきました」。深沢杏花騎手(田口輝彦厩舎)は兵庫県出身の19歳。通算15勝。笠松所属では中島広美さん(1992~2000年在籍)以来となる女性ジョッキー。夫婦が元笠松競馬騎手という田口厩舎に今春移籍した。コロナ禍で無観客のため、歓迎セレモニーにファンの姿はなかった。初騎乗から36戦目、1番人気・プラピルーンで鮮やかな差し切り勝ち。初勝利をゲットし、涙をにじませた。騎乗馬では、デビュー2日目に不運なアクシデント(ゲート内に厩務員がいたのに発走)に遭遇し、レース不成立。仕切り直しの一戦だった。「1着でゴールできて涙が...。周りの方のサポートに感謝でいっぱいです」と1勝の重みをかみしめた。
 
 小学4年頃から乗馬を始め、中学時代は競泳に打ち込み、背泳ぎで県大会3位に入るなど身体能力は高い。「バジガク」(東関東馬事高等学院)の出身で、先輩には名古屋の木之前葵騎手がいる。「憧れの存在で、葵さんのようなジョッキーが目標」という。「ステッキを持ち替えながら、きれいに追えるようになりたい」と夢を語り、ダイヤモンド柄の勝負服姿でキラキラと輝きながらゴールへ一直線だ。
 
★デビュー早々、発走トラブルで初Vお預け。不祥事による開催自粛が長引き、試練の日々が続いている。それでも、我慢強く意欲的に攻め馬をこなしており、その努力は再開後のレースにつながるはずだ。1年目は13勝、2年目は1月に2勝を挙げており、飛躍が期待されている。重賞レースで乗る機会も増えそうで、ファンの前でのセレモニーで勝利を祝いたい。
 
 【熱視線】
 笠松競馬に20年ぶりに誕生した女性ジョッキーで、たくさん注目を浴びてデビュー。所属の田口厩舎の夫人は、元笠松競馬騎手ということで心強いはず。重賞とかリーディングとか取ってほしい。