岐阜大学皮膚科医 松山かなこ氏

 今回は、爪の変色について説明したいと思います。皆さんは手や、足の爪をじっくりと観察したことはありますか? 爪を切る際に、「こんな色の変化あっただろうか?」と思ったことはありませんか? 一度、手と足の爪を明るいところでじっくりと見てみてください。他の爪と違う色をした爪はありませんか。

 爪の変色と言えば、もっとも多いのは指を挟んでしまった時などに出る内出血、つまり血豆の固まった爪下血腫です。これは爪の根元あたりに、丸い形で出現することが多く、線のようにはなりません。

 その次に多いのは、水虫による白っぽい変色です。菌の種類によっては黄色っぽかったり、緑色っぽく見えることもあります。変色した部分の形は爪の先端からくさび型になったり、線状になったりとさまざまで、爪そのものが分厚くなることもあります。

 気を付けなくてはいけないのは、茶色から黒色調で、爪の根元から先端まで走る線条の変色です。この爪の線を爪甲線条と呼びます。指先を多く使う人や、手湿疹のある人では、しばしば複数の爪に灰色がかった線条が出現することがあります。また、ある種の抗がん剤治療などを受けている人も、茶色~灰色の線条が複数の爪に出現することが知られています。

 一方、1本の指の爪にだけ線条がある場合=写真=は、皮膚がん、特に悪性黒色腫(メラノーマ)の初期病変の可能性を考えなくてはいけません。

 次に挙げるような症状のある人は、特に悪性の可能性が高いので、自分の爪があてはまるか、確認してみてください。①線条の先端が割れている②線条の部分の爪の表面がでこぼこしている③爪を超えて指の皮膚(根元でも先端でも構いません)に色素斑が伸びている④最近半年から3カ月ぐらいの間で線条の太さや色調に変化があった⑤線条の幅が5ミリを超えて太い-。一項目でも当てはまる人は注意が必要なので、早めに皮膚科を受診することを強くお勧めします。

 一方、乳児や幼児でも、このような項目に合致する爪甲線条が見られることが時々ありますが、お子さんの場合は基本的には、爪の根元にできた先天性のほくろによる変化なので過剰な心配は不要です。しかし、念のために定期的な経過観察をお勧めしています。爪の変色のみであれば、たとえ悪性の病変としても、ごく初期なので、適切な治療で完治が得られます。放置せず、一度皮膚科でご相談ください。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)