消化器内科医 加藤則廣氏

 胃や腸などの病気を正しく診断するためには胃カメラや大腸内視鏡などの内視鏡検査が必要です。最近は、細径内視鏡の開発や新しい消化器内視鏡機器の進歩によって、小児に内視鏡検査が適応される機会が増えています。今回は小児の消化管内視鏡の現状をお話しします。

 小児に対する内視鏡検査は、これまで患児の苦痛や安全性に対する懸念が保護者だけでなく医療側にもありました。そのため国内の複数の小児科関連の学会や研究会が合同で内視鏡検査の適応と安全性を検討して、2017年に小児消化器内視鏡ガイドラインを作成しました。

 小児の内視鏡検査には鎮静剤の投与が不可欠で小児科医が行いますが、麻酔科医が担当することもあります。内視鏡検査は消化器内科の内視鏡専門医が施行し、検査中はチームで十分な呼吸・循環管理を行います。また検査後は原則として日帰り入院か1泊2日の小児科入院で経過観察します。

 小学生の高学年や中学生は自分で自覚病状を説明できますが、乳幼児は繰り返す嘔吐(おうと)や腹痛、下痢および発育不良や、吐血や下血などの症状から何らかの消化器疾患を疑う必要があります。これまで心因性と診断・治療されてきた嘔吐や腹痛の患児の中には、胃カメラによってピロリ菌感染胃炎と診断されて除菌治療で治癒したお子さんや、好酸球性食道炎や好酸球性胃腸炎と診断されて抗アレルギー剤やステロイド剤の投与で改善したお子さんもいます。なおピロリ菌感染胃炎は鉄欠乏性貧血を生じることもあります。

 一方、腹痛や下血を来す患児は大腸内視鏡検査によって潰瘍性大腸炎やクローン病と診断されれば早期に適切な治療を開始できます。このように小児においても内視鏡検査は積極的に施行すべき有用な検査といえます。

 また乳幼児が異物を誤飲して救急外来を受診されることも少なくありません。異物は玩具の金属、プラスチックやボタン電池などで、食道または胃に停滞していた場合は緊急で胃カメラによる摘出が試みられます。

 20年に東京慈恵会医科大学が全国調査をして約千例のボタン電池の誤飲例を報告しています。食道に停滞して遅発性の食道穿孔(せんこう)を来した1例があり食道停滞例は速やかな摘出が必要です。なお診断時に胃を通過していたボタン電池の多くは自然排せつしていました。乳幼児の異物誤飲に気が付かれたら、可能であれば誤飲された異物と同じ物を持参されて早急に医療機関を受診してください。

(長良医療センター消化器内科部長)