肥田中学校の発表を熱心に聞くシンポジウムの参加者=土岐市土岐津町高山、セラトピア土岐
コミュニティ・スクールの効果などを解説する服部吉彦教授=同

 土岐市は来年度から市内全14小中学校で、地域住民が学校運営に携わるようにする目的で学校運営協議会を設置し、学校と地域が一体となって子どもを育てる「コミュニティ・スクール」制度を始める。制度開始に備えて市教育委員会が8月下旬、シンポジウムを市内で開き、小中学校の教職員や地域住民ら約90人が、同協議会やコミュニティ・スクールの活動内容の理解を深め、有効な運用方法を探った。

 学校運営協議会は教職員のほかに保護者や地域住民もメンバーに入る。校長など管理職の教職員が異動しても、学校が地域と組織的な連携が継続できるメリットがある。また、協議会で学校運営の基本方針を承認することで、地域住民が当事者意識を持って学校に関わることにつながる。県内では昨年4月時点で201校が制度を導入している。

 市内の全小中学校で制度が始まるのを前に、市教委は妻木小学校と肥田中学校を研究校に指定。2018年度から実践的な研究を続けた。今回のシンポジウムでは両校が取り組みを発表し、各校や市民らが情報を共有する目的で開いた。

 妻木小学校は、学校運営協議会で学校側の教育に対する思いを委員に伝え、地域が支援できることを考えるという進め方で制度を実践。児童が高齢者から地域の歴史を学んだり野菜づくりを教わったりした授業内容を紹介した。コミュニティ・スクールの効果について同校教諭は「学校がより開かれた存在になった。子どもたちにとって、安心して学習や生活ができる場をつくるきっかけになった」とまとめた。

 肥田中学校は学校と地域住民が願いを共有するための話し合いを「熟議」と決め、「子どもたちの安心・安全」をテーマに本年度の協議会で学校周辺の草刈りや運動場にある小屋の撤去を決めたという。同校教諭は「地域の人と心をつなぎ合う努力をしないとコミュニティ・スクールは成立しない」と強調し、「住民一人一人が教育の責任があることを、学校が伝えていかないといけない」と難しさを語った。

 また、シンポジウムには岐阜市の岐阜小学校、東長良中学校の校長時にコミュニティ・スクールを推進した、中部学院大教育学部の服部吉彦教授が参加。両校の発表を聞き、「非常に丁寧に取り組みを進めている」と評価した。

 服部教授は「コミュニティ・スクールとしての歩み 学校・家庭・地域社会の連携」と題して講演し、制度導入の教育面での効果として「住民が教育に関わることで児童は地域社会の一員だという自覚が芽生える」と解説。今後の展開について「住民が慣れるまでの最初の3~5年は学校主導で協議会を進めるべき」とアドバイスを送った。

 市教委の山田恭正教育長は「子どもたちは地域の宝物。地域の歴史や文化と皆さんの力で子どもに生きる力を付けてもらいたい。今回のシンポジウムが、円滑に制度をスタートできることにつながればうれしい」と話した。