運動会に向け、熱の入った練習を続ける児童=関市洞戸市場、洞戸小学校
地域住民らを前に、息の合った演奏を披露する児童ら=関市洞戸市場、ほらどキウイプラザ(昨年11月のほらどキウイマラソン)

「先輩の思いをつないで」

 2学期が始まったばかりの関市洞戸市場の洞戸小学校では、校内の至る場所から、"伝統の調べ"が響いてくる。その正体は、4~6年生の全児童が加入する鼓笛隊が奏でる音色。主旋律を奏でる鍵盤ハーモニカに、太鼓やシンバルなどの打楽器の小刻みな音が加わった元気な演奏は、長年地域の人たちに笑顔を与えてきた。

 全校児童数81人の小規模校だが、鼓笛隊の歴史は古い。1988年4月、旧武儀郡洞戸村内の旧洞戸小学校と洞戸北小学校が合併する前から、それぞれの学校で鼓笛隊を組んでいたことが分かっている。現在の児童の祖父母が鼓笛隊だったという話もあるほどで、約50年前から地域の伝統として根付いてきたことは確かなようだ。秋の運動会を皮切りに、地域有数のスポーツイベント「関市ほらどキウイマラソン」会場での演奏披露など年に数回披露する場があり、地域の風物詩となっている。

 伝統を守るために大切にしているのが、毎年12月の引き継ぎ式。卒業間近の6年生から、使い込んだ楽器や指揮棒を受け取り、自らの名前と新たに使う下級生の名前を書いたシールを貼るというもの。新たな鼓笛隊の根幹となる音づくりに入るのを前に、下級生の心の中に、隊を率いる責任感を芽生えさせる効果が期待される。

 新年度からは、鼓笛隊に入隊した4年生を、5、6年生が指導している。粘り強く、そしてこつを分かりやすく伝えられるか-。上級生にとっては教える側に立つのが挑戦で、個人の技術向上に資するだけでなく「縦割り教室」のような社会性を養う効果も期待される。一方、教えてもらう4年生も、低学年の時から上級生が演奏する様子を見ているため、入隊したてでも隊への憧れや、与えられたパートへの責任感が強く上達も早いという。

 今月上旬、夏休み明けの子どもたちが体育館に集まり、21日の運動会で披露する鼓笛隊の全体練習を行った。今年の全メンバー37人がそろって運動会用の練習をするのは初だったが、夏休みの個人練習の成果をいかんなく発揮し、豊かな音色を響かせた。楽器だけでなく、隊列変化も整然とした動きを見せていた。

 指揮の6年野村心暖さん(11)は「今年は下級生を引っ張っていく立場。これまでの先輩がつないできた伝統への思いを大切にしたい」と責任感を口にする。タンバリン担当の6年林愛菜さん(11)も「まずは運動会で(聞きにきた)地域の人たちに、最高と思ってもらえる演奏を下級生たちと目指す」と目を輝かせている。