地域の女性から指導を受け、ティッシュボックスカバーを縫う生徒=各務原市上戸町、稲羽中学校

 各務原市上戸町の稲羽中学校で、地域の女性たちが先生となってミシンの使い方を学ぶ2年生の家庭科授業が行われた。普段教壇に立つことのない生徒の母親らが「これなら教えられる」と手を挙げ、ティッシュボックスカバー製作を指導。同校独自のミシン学習は、各務原市が昨年度にスタートさせた「コミュニティ・スクール」事業の一環で、モデル校となっている同校で本格的な取り組みが始まっている。

 コミュニティ・スクールは、「地域に開かれた学校」から「地域が運営する学校」をキーワードに、保護者や住民らが積極的に学校運営に関わり、小中学校の義務教育9年間を通して、地域で子どもたちを育てていくことを目指している。市内に8校ある中学校区単位で進められ、同校と川島中学校(同市川島河田町)の2校がまずモデル校指定された。

 稲羽中では、自治会連合会長や青少年育成推進指導員、校区内に2校ある小学校のPTA会長らがメンバーとなって、基本方針を決める「学校運営協議会」を発足。会合を重ねて、家庭科での住民講師や学校行事での小中学校連携などを決めた。

 ミシン学習は、生徒の母親や祖母ら10人が「地域の先生」として手を挙げ、7月に2年生の授業で3日間行われた。生徒たちは普段、家庭でも触れたことのないミシンを動かし、興味津々の顔で、ティッシュボックスカバーを縫い上げた。やり方が分からず困っている生徒に丁寧にアドバイスしたり、生徒も積極的に質問するなど、教室は和気あいあいとした雰囲気で授業を楽しむ姿が見られた。

 先生を務めた丹羽弘子さんは「学校で勉強を教えるなんてありえないと思っていた。でもミシンならと思い、参加した」。2年生の田島ほの花さんは「初対面の人ばかりだったが、笑顔で話し掛けてもらい、カバーが完成した時には一緒に喜んでくれた」と感想を話す。

 同校では、ミシンに限らず手縫いや調理実習も取り入れていく予定で、江口雅明校長は、同校にここ数年、家庭科教員がいないことを背景に挙げながら「大学の被服科で長年教えていた女性も参加してくれた。地域の"教育力"を掘り起こし、生かしていきたい」と意欲を示す。

 小中連携では、体育祭に2校の6年生児童を招いたり、小学校に出掛けて合同の合唱練習をしたりと、生徒児童が絆を深めている。

 もう一つのモデル校の川島中では、地域が一体となり、防災への取り組みを強化しようと、学校で住民参加の「災害図上訓練(DIG)」を実施。1年生全員とシニアクラブのお年寄りらが、地震が発生した際の地域の危険箇所をチェックし、互いに防災意識を高めている。