体操服で通学する中学生。6月に学校が再開した後も制服を着ない日々が続く=岐阜市内

 新型コロナウイルスの影響で収入が減るなど家計が打撃を受ける中、来春の中学進学を控えた子を持つ岐阜県各務原市の40代女性から「制服って買わないといけないの?」との疑問が、岐阜新聞「あなた発! トクダネ取材班」に寄せられた。県内の多くの中学校は、感染対策として洗いやすい体操服やジャージーでの登校を指導し、制服着用の予定は立っていない。女性は「コロナで収入が減ったのに、着ないかもしれない制服を買う余裕はない」と話す。

 女性は専業主婦。コロナ禍で夫の収入は2割減ったという。わが子の中学進学を控えるが「今年入学した子たちはほとんど制服を着ていない。当面コロナが収束しないなら、こんなにもったいない買い物はない」。地元の市教育委員会に問い合わせると「今後の制服着用は未定だが、制服を買わなくていいという通達はしていない」と言われた。

 制服について県教育委員会学校安全課は「各学校が伝統や生徒の帰属意識、学生らしい身だしなみといった観点から着用を校則で規定している」と説明する。5月に市町村に提示した学校再開ガイドラインで「付着したウイルスを洗濯によって除去する場合、制服は多数回の洗濯には適さない」として「家庭での洗濯が比較的容易な服装(学校指定の体操服やトレーニングウエアなど)での通学を可能とする」との原則を示したが、着用を巡る判断は市町村や学校に委ねている。

 公立中学校が指定する制服の多くは、冬服が約5万円、夏服が約2万円、合わせて約7万円。学生服販売店への注文は早期割引や団体割引を利用して年内に採寸、発注することが多い。長男の進学を控える岐阜市のパート女性(42)は「今のところ買う予定だけど、使わないと思うと複雑な心境。少し様子を見たい」と話す。

 より切実なのは、コロナ禍により職を失ったり仕事が減ったりした世帯だ。一人親など経済的な事情を抱えた家庭もある。市町村の教育委員会が困窮家庭に学用品費などを補助する就学援助制度は、生活保護世帯に近い状態と認めた「準要保護」世帯が対象だ。

 取材班の調べでは、県内の小学6年生のうち準要保護世帯の児童は1415人(10月1日現在)で、前年度から増加。県内では39市町村が学用品準備費3万~6万円を準要保護世帯に支給しているが、支給は入学直前の2、3月が一般的で、対象世帯は一時的とはいえ購入費を自費で工面する必要がある。入学時に必要な学用品は他にもあり、制服購入費は大きな負担だ。

 各務原市の女性は「制服が必要だというなら、せめて収束してから購入すればいいように、行政が働き掛けてほしい」と求める。県教委は「保護者や学校から意見、要望が来たら、感染状況も見つつ、総合的に検討したい」と話している。

   ◇

 岐阜新聞は、暮らしの疑問や地域の困り事から行政・企業の不正告発まで、情報提供や要望に応え、調査報道で課題解決を目指す「あなた発!トクダネ取材班」を創設しました。あなたの知りたいこと、困っていることについて、ご要望や情報をお寄せください。LINEの友だち登録で取材班と直接やりとりもできます。