試合形式での逮捕術の練習に励む特練員=岐阜中署
県警が初優勝した第2回全国警察逮捕術大会での記念写真=岐阜中署

 屈強な警察官たちが鍛錬する武道の一つに「逮捕術」がある。事件現場での犯人制圧を想定した警察独自のもので、古くから剣道、柔道と同様に都道府県警を集めた全国大会も行われている。複数の警察官にその面白みを聞いて回ると、「逮捕術の試合のルールは岐阜発祥ではないか」との説が浮上。元祖説の出どころを探ろうと岐阜県警の歴史をひもとくと、逮捕術の聖地としての一面が見えてきた。

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 逮捕術の歴史は古く、基本的な構想が出来上がったのは1947年。警察庁が剣道や柔道などの格闘技の技術を組み合わせて創案したとされている。他の武道と違うのは「犯人を必要最小限の力で効果的に制圧する」という警察ならではの目的で行われている点だ。

 服装は道着に剣道で使われるような面の防具を着け、専用のシューズを履く。徒手のほか、実際の事件現場で用いる備品と同じ大きさの警杖(けいじょう)や警棒、短刀を使い、肩や小手などへの打撃、投げ技など複数の格闘技の要素が詰まっている。警察学校では柔道と剣道のいずれかを選択で履修するが、逮捕術は全ての生徒が行うことになっている。

 県警の歴史がまとめられた「岐阜県警察史」や県警教養課によると、技術の向上などを目的として逮捕術の県大会を69年に全国に先駆けて開催。その後、警視庁や他道府県警が岐阜県警の定めた用具や防具の規定、勝敗を決める反則、「1本」などのルールを倣い、改良を重ね、78年に初の全国大会が開かれた。岐阜発祥とされるゆえんはここにあるようだ。

 岐阜県警が「逮捕術の聖地」という理解は全国の警察組織からも定着しているという。遠征で岐阜にたびたび足を運んでいる警視庁の担当者も岐阜県警がルールを先駆けて作ったことを知っており、「岐阜は聖地」との認識を持っているという。

 聖地の県警は古豪でもある。大会は警察組織の規模に合わせて3部に分かれ、2部に所属する岐阜県警は第2回大会での優勝を皮切りに、これまで10回の優勝を重ねた。途中、人員規模の変更で2部から1部に変更された広島県警を除き、2部では最多の優勝回数を誇る。

 岐阜県警では、逮捕術の術科特別訓練員(特練員)として、県内5署から男女計16人が岐阜中署に集い、研さんを積んでいる。県警の逮捕術特練員の指導に当たる加藤洋基警部補は「過去の先輩から『逮捕術は岐阜から始まった』と言われてきた」と話す。代々の特練員は逮捕術の先駆けとしてのプライドを持ち続けてきた。「良き伝統を受け続けることで、逮捕術を『岐阜のお家芸』と確立することができている。聖地で逮捕術ができることに感謝しかない」と語る。

 現役の特練員の思いも強い。岩田瑶二朗主将は「逮捕術のおかげで、どんな犯人が相手でも、強い気持ちで向かわせてくれる」と意義を話す。コロナ禍も相まって、練習ができない日々が続いたが、今年は11月に全国大会が4年ぶりに控えている。特練員らはフェースシールドを着用しながら、午前7時から打ち込みや試合形式の練習を続けている。岩田主将は「優勝旗は岐阜のものだという気概を持って競技に臨みたい」と意気込んでいた。