岐阜県内の酒メーカーが今季、新型コロナウイルスの影響で製造量を減らしている。県酒造組合連合会の調べで、1~3月期の製造量が前年同期比で3割弱減少していることが分かった。主な出荷先である飲食店の時短営業、休業で、酒の消費量が減少しているのが要因。ワクチン接種が始まり収束への期待は高まるが、感染の第4波が猛威を振るう中、飲食店の通常営業復帰は見通せず、酒業界の受難の季節はまだ続きそうだ。
多治見市笠原町のメーカー、三千盛。7代目の水野鉄盛さん(27)は「酒だけが悪者にされているようでとてもつらい」と本音を漏らす。マスクを外し、長時間、大きな声で会話することが感染を引き起こす行為のはずが、いつしか酒そのものを敵視するかのような風潮が一部であることに不満を抱く。
酒提供の全面的自粛の影響が今後、出てきそうだという。2020年度の酒の仕込み量はコロナ禍で出荷量が減った分だけ減らした。水野鉄治社長(65)は「家庭用への販売に力を入れるなど、やるべきことをやるしかない」と話す。
飛騨地域の祝いの席で重宝される「久寿玉」の蔵元、高山市上一之町の平瀬酒造店。15代目の平瀬市兵衛社長(55)はタンクを前に「先が見通せないから、どんどん在庫が増えていく」と肩を落とす。酒米を注文し、造り始めてから販売までに数年を要するため、感染拡大の波に応じて製造量をすぐには減らせない。
20年度の出荷量はコロナ流行前の19年度と比べて2割強減少した。出荷先の7割以上が飛騨地域のため、高山市や下呂市がまん延防止等重点措置の対象地域に加わったことで、今後、落ち込みが予想されるという。「飛騨の宴会文化に支えられてきた。これが続けば、いつまで耐えられるか分からない」と平瀬社長は言う。
「女城主」の蔵元、恵那市岩村町の岩村醸造は、今季の製造量を前年比4割減と、大なたを振るった。渡會充晃社長(49)は「これで、在庫量は昨年と同程度」と話す。
悲観的見方により製造量を落とす蔵元から、通常の生活が戻ることを見越し在庫を積み上げる蔵元まで、経営判断で対応はさまざまなよう。飲食店の時短営業、休業がこのまま長く続けば、蔵元の経営体力を徐々にむしばむことも予想される。
県は、まん延防止等重点措置の県指定に伴い、飲食店と取引のある酒蔵を含む飲食関連業者に支援金10万円を支給することを決め、制度設計を急ぐ。影響額と比べると少ないが、県の担当課は「国、県の支援制度を活用して、なんとかしのいでほしい」と説明する。
同連合会によると、来季の酒米注文量は、2年連続で2割近く減少しており、新酒の製造は県全体で減る見込み。県の地場産業を引っ張ってきた日本酒業界。さらに踏み込んだ支援策を求める声が今後大きくなりそうだ。










