意見交換をしながら新型コロナウイルス関連の記事をまとめる新聞部員=山県市高富、高富中学校
自分たちで作った新聞コーナーでニュースを全校に発信する部員=同

山県市立高富中教頭 奥田宣子
 高富中学校には毎日、3社の新聞が届き、その中で知っておくべき記事は、全職員が目にできるように紹介している。そんな中、記事を手に取った教員から、「新聞を読むことが日課になった」「記事の内容を学級の話題の一つにしている」「生徒も最近の新聞の内容をよく知っていて、社会的な話ができる」といった会話が聞こえてきた。教員自身が情報源として新聞を重視し、日常に新聞を取り入れたことによる生の声である。

 部活動が始まった6月中旬、本校の新聞部員は、既に新型コロナウイルスに関する記事を集めていた。収集した記事を基に自分の考えを仲間に発し、「これについてどう思う?」と、自然に問いを投げ掛けていた。一つの記事が生徒の心を動かし、仲間の意見によって、さらに自分の考えを見つめ直していく。まさに主体的・対話的で深い学びが生徒同士で成立していた。

 本年度に新聞部に入部した1年生の堀佑基さんは、都知事選について興味を持った。「新型コロナ感染症が広まる今、安心して暮らせることを望んでみんなが選んだ人は、都民の生活を守ってくれる人だ」と未来に期待を寄せた。

 2年生たちも新型コロナのニュースに関心を高めた。栗本さくらさんは、危険を伴っても命を守る医療従事者としての生き方に触れ、「自分も将来そんな仕事に就きたい」との思いを深めた。

 林優吾さんは、豪雨被害の記事から「自然災害はいつ起こるか予測できないため、いざという事態に備える必要がある。適切な避難指示や避難所運営に加え、新型コロナの影響で3密を防ぐ感染症対策もしなければならないことは、本当に大変なことだ」と現実を見据えた。

 恩田啓暉さんは、テレワークやオンライン授業の記事から、長期休校中に本校が配信した動画教材で家庭学習した経験を振り返り、これからの社会のスタイルを考えた。さらに「状況に合わせて、一人一人ができることを考えて行動することが大切だ」と話し、そんな学校にしたいという強い願いを持った。

 実際に本校では、授業時間数を確保するため、日課に位置付けていた掃除の時間をなくし、7時間授業を組んだ。この新しい日課ができた背景には、状況を考えた生徒たちの行動があった。「自分たちの手で学校を美しくしたい」と、自ら掃除ボランティア組織を立ち上げ美化活動をして、掃除の時間がなくてもよい環境にしたのだ。一人の生徒が投げた一石が、学級、学年、全校へと、大きな波紋になって広がり、学校全体を動かしたのである。

 新型コロナで多くの制限が要求され、実際にできなくなったことも多い中、生徒自身が生徒目線でできることを考え、自分たちの手で学校をつくり上げている。生徒が持つ力の可能性とその大きさを実感した。そして今も、この大きな一歩を踏み出すエネルギーが、生徒の中にふつふつと湧き上がっていることに頼もしさを感じている。