新型コロナウイルス感染予防のため、簡略化して行った入学式=山県市高富、高富中学校
新聞記事を活用した若手教員対象の研修会=同

山県市立高富中教頭 奥田宣子
 2020年度が始まり、高富中学校は4月7日、新型コロナウイルス感染予防として、徹底的に「3密」(密閉、密集、密接)を避ける対策を施し、テレビ放送による着任式、始業式、そして、簡略化した入学式を実施した。久しぶりに顔を合わせる生徒らも距離感を意識し、この事態を重く受け止めていた。そして、マスク姿の生徒からは、やはり進級したことに対する期待感が伝わってきた。貴重な出会いの瞬間は、例年通り、生徒と先生との新鮮な空気に包まれていた。

 しかし、日常に不安をもたらしている新型コロナウイルス感染に対する意識は、社会的に高く、以前にも増して、テレビやネット、新聞による情報に対して、敏感に反応している。そのため、こうした情報には、根拠に基づく事実であることが求められる。この点で高富中学校は、昨年度より確かな情報内容を共有するために新聞記事を全職員が読んでいる。先日は「県内休校 再延長も」「感染防ぎ健康維持を」の見出しの記事をもとに、若手の先生方を対象とした「現実を受け止めながら、今できることを考える研修」の場を設けた。いくつかの記事と向き合うことによって、現状把握を深め、危機意識を高めるとともに、今やるべき具体策を考えることができた。

 そして現在、授業が行えない状況に不安を抱いている生徒のために、提供できる教科学習を考えている。その一環として、新聞を活用した学習を考えた。以下、その一部を紹介する。

 新聞の機能は、事実を早く正確に伝えることである。つまり、紙面を広げることによって、社会の動きを知り、自分たちの今を見つめることができる。その折に、記事を読むことで、誰にでもできる言葉の学習も可能である。1日分の新聞の中身をじっくり見るだけで、誰もが自分の考えを深める教材としての新聞となる。その存在を今こそ、考えてみたいと思う。

 例えば、漢字や言葉の意味を調べたり、活用方法を広げたりすることが、自分の考えを文字で伝える力を高める。それだけでなく、記事には、事実をより分かりやすく、説得力のあるものにするために、図やグラフが示されている。こうした図やグラフを読む力も、関心の高い記事によって、教科書以上に身に付けることができる。また、気になる記事を切り取って、感想を書きためていくことも、自分の考えの幅を広げ、書く力を付ける機会となる。特に、臨時休校が続く現在、確かな情報をもとに、「今」という時間に対する素直な思いを発信することは、社会的な視点をもって考える力となる。

 この現状を見つめ、一人一人が本気で命と向き合う構えをもつことが、経験したことのない生活に対応できる力を高めるのではないだろうか。日常生活がこんなにも大きく崩れた不安な気持ちを、生徒の未来に向けて、今できることと向き合いながら、一人一人の乗り切る強さに変えていきたい。