新聞の1面記事を見比べて、情報の伝え方の違いを話し合う生徒ら=羽島市足近町、羽島中学校
多目的室に設けられたNIEコーナーで、気になる記事を切り抜く生徒ら=同

 2年生の国語科の授業で、生徒は2紙にそれぞれ掲載された同じニュースの1面記事を見比べた。黒板には、「新聞には編集者の??がどのように表れているのだろう」とある。教諭からの最初の問い掛けは「四角に入るのは何か」。生徒は、中高生に関する数字と問題にそれぞれ重きを置いた2紙の見出しの違いから「思い」と見抜き、記事の配置の仕方など、重視する情報ほどより大きく目立たせる各社の工夫を見つけていった。

 「同じニュースでも、見出しや記事の大きさなど扱い方が違うことが分かった」と話すのは、読書が好きで将来は法律関係の仕事に就きたいという山田聖琉さん(13)。「ちょっと暇な時に読んでみたら面白かった」と、中学生になって新聞を読み始めたきっかけは何気ないものだったが、授業では紙面に表れた新聞社の意図をつかみ、興味が増したよう。

 普段はスポーツ面や社会面を中心に読んでいるという浅野太輝さん(14)も「1面だけを見ても、紙面を作る側の考えによって載せる内容やレイアウトが変わる。新聞は幅広いジャンルの情報が凝縮されているので、これからは他の面も読んでいろいろなことを知りたい」と話した。

 新聞は、授業の教材として以外の活用も。自宅で取り組める課題として、希望する生徒に気になった記事の要約と感想(いずれも100字)を書いてもらったところ、毎日続ける生徒ほど国語科の試験の点数が上がったり、高校入試の模擬面接で話にまとまりがみられたりしたという。

 国語科の吉田昌知教諭(24)は「ゲーム的要素を取り入れた授業で新聞への親近感、興味ある記事を切り抜く作業で達成感を高めることができる。多様な情報が目に入る新聞を日常的に手に取り、世の中の動きを感じてもらいたい」と願う。

 NIE実践校の指定を受け、同校では昨年度から図書館に新聞ラックを設置して生徒が閲覧できるようにしたほか、本年度は多目的室にNIEコーナーを設け、各紙を自由に切り抜いて持ち帰ることができるようにした。

 切り抜きについては、社会問題などに関する記事を集め、内容や感想をまとめる活動も行っている。昨年7月の九州北部豪雨をテーマに取り組んだ3年坂井田崇さん(15)は「岐阜から遠く離れた地域の災害で自分とはあまり関係ないと思っていたけど、新聞を読んで被害や被災者の思いを詳しく知り、深刻さが分かった」と振り返った。

 森山健校長(56)は「新聞に親しみ、情報の中身や書かれ方の違いも知って、物事の全貌を捉えていく力を養ってほしい」と話す。同校でも約3分の1の家庭が新聞を購読していないとみられ、生徒が普段から新聞を気軽に広げられる環境をいかに整えるかが実践教育の鍵となっている。