片岡則夫清教学園中・高校図書館長=東京都千代田区内幸町、プレスセンターホール
主権者教育とNIEについて話す黒崎洋介瀬谷西高校教諭=同

社会とのつながり学び合う

 新聞記者について研究を冊子にまとめた中学生。実社会の課題を議案に模擬議会を体験する高校生。東京都のプレスセンターホールで開かれた「第3回NIE教育フォーラム」では、生徒らが日常的に新聞に触れ、自ら課題を見つけて探求した成果や、学び合う姿が紹介された。いずれも、次期学習指導要領が目指す「主体的、対話的で深い学び」を実現し、新聞が大きな役割を果たしている実践だ。これからのNIEの可能性に、期待感が大きく膨らんだ報告だった。

 「学校図書館と連携したNIE」を発表したのは、大阪府河内長野市の清教学園中・高校教諭で図書館長の片岡則夫さん。中高一貫教育で図書館「リブラリア」を活用する探求型プログラムを推進している。中学生全員が、自由なテーマで卒業研究をまとめ、製本して図書館に並べる。高校探求科の生徒は、4万字を超える卒業論文を書き上げる。

 同校図書館は、授業開始前から生徒の姿が多い。館内で授業も行われるが、休み時間、放課後も混雑し、生徒らが新聞や文献に目を通し、インターネットを使い、時には先生を交えて話し込む。

 「探求で、何をどうするか分からない子どもを手助けするのが図書館。そこに新聞もある。新聞記事は、コンパクトにまとめられ、検索するキーワードがちりばめられている。生徒は新聞社のデータベースも使っており、記事は、探求する手がかりの役割も果たしている」と、新聞をハブメディアとして位置づける。

 卒業研究の中にも、実際の記者に取材した「新聞は世界から消えてしまわないだろうか 活字の力は時代を超える」、記者を目指す生徒の「新聞記者~小さな文字で伝える大きな仕事~」と、力の入った作品が並ぶ。

 ただし生徒へのアンケートでは、新聞をとっている家庭は半数、新聞を日常的に読むのは全体の4分の1だった。「新聞に関するリテラシーが失われているのではないか。新聞を広げなければ、ますます新聞から離れていく。興味を持っていること以外の記事に出合う機会が限られてしまう」と心配する。

 「生徒らは、新聞は情報源として信頼でき、大切だと理解している。歴史資料としても、本当に面白い。記事データベースの普及など、子どもが記事と出合う機会を、ぜひ増やしてほしい」と、NIEのさらなる工夫と充実へ期待を寄せた。

 また、神奈川県立瀬谷西高校の公民科教諭黒崎洋介さんが、主権者教育を目指して社会的な課題で模擬議会を体験するなど、さまざまなNIE実践を報告。「次期学習指導要領を見据えると、主権者教育は、選挙年齢の18歳の段階で何ができるようになるかという視点を持ち、学校全体で取り組むことが求められる。新聞を日常的に活用し、生徒を現実社会とつないで学びの意味をしっかり伝える事が大切」と訴えた。

 基調講演では、慶応義塾大学文学部教授で日本図書館情報学会副会長の倉田敬子さんが、情報リテラシーの重要性に言及し、実際の大学生の状況を示しながら新聞活用の必要性を提案。

 関口修司日本新聞協会NIEコーディネーターはフォーラムをまとめ、「日常的に新聞を読むことが広い視野を育て、記事のデータベースや手作業のスクラップが考えを深く掘り下げるのにとても有効だと分かった」と締めくくった。