自分たちの作業製品を女将の伊藤知子さん(左から3人目)に納めた生徒ら=岐阜市湊町、十八楼
ミシンを使い、丁寧に布製品を作る縫製班の生徒ら=岐阜市小西郷、岐阜特別支援学校の作業棟

「良い製品を」地域販売に力

 特別支援教育で行われている、働くスキルを身に付ける作業学習。その充実を目指し、岐阜特別支援学校(岐阜市小西郷)の高等部では本年度、地域や企業との関係を深めて生徒らの作る木工、縫製といった製品を校外で販売する活動に力を入れている。製品を手に取る人たちからの声を聞いたりして生徒らのやる気を高め、個々の知識・技能の習得や就労意欲の向上につなげている。

 高等部は3学年で生徒数が133人(9日現在)。作業学習は卒業後の進路を定めていくために重要な学びで、生徒は種別に設ける11の班に分かれ、週4回の授業を受ける。そこで作られるのが作業製品だ。例えば縫製班では、生徒がミシンの操作をマスターし、和柄などの布を縫ってエプロン、箸袋、トートバッグ、ペンケースなどを製品化している。

 校外での販売活動はこれまでも行っているが、本年度はその機会を意図的につくり出し、新たに金融機関のイベント、「ふるさと栗まつり」(山県市)などに参加。4月からは常設の販売拠点として、岐阜市の老舗旅館「十八楼」の土産品の売店が加わった。また、同市で開かれた第46回全日本中学校国語教育研究協議会・岐阜大会(10月)、日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)青年部会の全国大会・岐阜大会(11月)では、生徒の製品が参加者への記念品として採用され、大量受注をした。

 十八楼の売店には縫製、印刷、手芸の3班の製品が常時並ぶ。納品が1、2カ月に1度あり、前回は縫製班長の水谷俊貴さん(3年)ら生徒代表3人が売店を初めて訪ねた。

 「箸袋は布の柄が『かわいいね』と言われる」「コロコロ(木工製品)は磨きが良くて手触りがいい」-。売店部責任者の岩田豊子さんは購入者の声を伝えるとともに、「外国人客向けに鵜飼いの絵で手すき和紙のはがきを作っては?」「手織り製品には包みに『手織り』のシールを貼ってアピールしたほうがいい」などと、売る工夫や製品開発へのヒントも授けた。

 女将(おかみ)の伊藤知子さんは同校を訪問して作業学習に一生懸命に打ち込む生徒の姿を見て「製品を広めたいと思った」と商品として置くようになった動機を話す。でも、縫い方が良くない製品を返品したこともあり、買ってもらう以上、作り手として消費者目線を持つ大切さも伝授している。2人の話を聞き、水谷さんは「(自分の班が担当する)箸袋の人気が高くてうれしかった」と喜びつつも、「ミスのないように作っていきたい」と気を引き締めた。

 校外での販売活動を、サポートする岩田恭子教諭(進路指導主事)は「一生懸命にやることが誰かの役に立ち、喜びになる。それを実感できる機会」と捉え、「自信を持ってほしい」と生徒らに温かなまなざしを送る。一方、宮川誠校長は就労意欲への教育効果に触れる。「作業学習で養われるのはものづくりの心。良い製品を作ろうと考えたとき、手にする人たちに喜んでもらおう、役に立てるようにしようと思いをはせなくてはいけない。それが働くことの基盤になる」と話す。

 「良いものを良いものとして出していきたい」と宮川校長は考え、今後もものづくりにこだわり、ラッピングなど売り方も課題に据える。先ごろは、校名から図案した「Gitoku」のロゴマークを試作した。自校独自のブランド化をも構想している。