手書きにこだわった校長新聞「AGE」を見せる安田英士校長=岐阜市粟野西、岩野田中学校
安田校長が自作したレタリングの見出し。校長新聞を〝見せる〟ために、デザインに趣向を凝らす

興味引く話題で〝見せる〟 書き手の意見、盛り込んで

 岐阜新聞社は、本年度「かべ新聞コンクール2017~ぎふっ子応援プログラム~」を実施。県内の小中学生を対象に、8日から参加の申し込みを受け付けている。新聞づくりとは、自分で見聞きしたり、体験したことを"書いて"伝えること。その面白さをよく知り、手書きの校長新聞「AGE」(B4判1ページ)の作成を続けている岩野田中学校(岐阜市)の安田英士校長(56)につくるためのこつ、思いなどを聞いた。

 -思い出からうかがいます。平成元年、岐阜大付属中学校に最初に赴任した時、生徒の新聞づくりの様子を見て驚いたそうですね。

 当時、全学年の全学級で「班新聞」を作っていました。どれも出来がよく衝撃を受けました。作り方を指導する立場でしたが、逆に生徒から教わっていた感じです。それが私の新聞づくりの原点のようなものになりました。

 -作る上で意識していることは。

 どうしたら読み手の興味を引けるかを考えます。そのために記事のネタを探し、企画します。新聞は文章を読ませるものですが、"見せる"という要素があります。ぱっと見たときに読みたくなるような工夫も大事です。

 -校長新聞ではそれをどのように。

 白紙全体を眺め、レイアウトをイメージします。イラスト、囲み記事の置き場所は見た目の印象を左右するポイントになります。見出しにも力を入れます。手間は掛かってもレタリングで書き、メイン記事には横向きに表します。私はマス目入りの用紙をもとに作りますが、文字をマス目いっぱいに書いています。大きさがそろって美しく見えるからです。あと、これは遊びになりますが、題字の背景の地紋は岩野田中の校章を集合体にしてデザインしたものです。作るのが大変でしたが、これもオリジナリティーで、楽しみの一つです(笑)

 -新聞づくりの妙味とは。

 読み手の反応ですね。校長新聞を「見せてよ」「送ってよ」と言われるとうれしい。以前「メデイア社会を生き抜く」と題してスマートフォンの問題を取り上げたら、PTAの保護者らがその記事をもとに議論をしました。思いもしない使われ方に驚き、新聞の力を感じました。

 -児童生徒の作るどんな新聞を読みたいですか。

 体育大会、文化祭、修学旅行での笑いや失敗が出てきて、書き手の児童生徒の姿が見えてくる記事を読みたいですね。「私はこう思う」とオピニオン(意見)や考えも入れられるといい。

 -それはどうしてでしょう。

 読み応えが出てくるし、私の思いもあります。日本の子どもたちは自己肯定感が低いと言われます。控えたりへりくだったりは日本人気質かもしれませんが、「自分はここにいていいんだよ」「自分には力があるんだよ」と自分を表に出してほしい。新聞はそれができる、自己肯定感を高めるツールになります。

 やすだ・えいじ 1960年、飛騨市古川町生まれ。都留文科大を卒業し、岐阜県で教員。岐阜大付属中学校に2回勤め、新聞部などで生徒の新聞づくりを指導。岐南中(2013~15年度)で現在の校長新聞を作成、岩野田中(16年度~)でも継続。4月から県小中学校長会で出版事業委員長を務め、夏休みの課題用冊子「夏の友」の編集などに携わる。専科は国語。趣味はマラソン。