テーマに基づいて切り抜いた記事を再構成し、コラージュ作品を製作する生徒ら=2020年10月、養老郡養老町、大垣養老高校
多角的な切り口で関心のある時事問題を探究し、画用紙にまとめた「新聞コラージュ作品」

 「池江璃花子選手『第二の水泳人生』」「被災経験から消防士に 今度は助ける番」-。同年代が生き方を模索する姿を伝える新聞記事の切り抜き。NIE実践校の大垣養老高校(養老郡養老町)では、生徒自身の将来設計や社会に役立つ職業への理解を深めるため、記事を活用し、進路選択の動機付けに役立てている。

 同校は実践1年目の昨年度、新型コロナの感染リスク回避を優先したため、生徒同士のコミュニケーションの機会確保が最大の課題だった。教務主任の土本繁教諭(49)は、休校中に実施環境が整ったオンライン授業によるNIE活動を提案。9月中旬、全校一斉ロングホームルームで、人間としての在り方や生き方を考える道徳の授業をした。

 「生徒の関心が高く、共通の話題となり得る『自分らしい選択』や『誇りある生き方』を考えさせたかった」(土本教諭)と、同年代の池江璃花子選手に関する記事を活用。生徒たちは、池江選手が白血病を乗り越えてレース復帰した姿や、延期の東京五輪開幕まで1年で自らの境遇を重ねながら世界へ発したメッセージを読んだ。

 さらに新聞を題材に対話を楽しむ「ファミリーフォーカス」の手法を用い、意見交流。「夢や希望を持って喜びある生き方をしたい」「過去の功績や療養で練習から離れたことに縛られない強い精神力こそ、コロナ時代に必要」などの発言があった。また、目標のために今、努力していることを宣言する姿もあった。授業後のアンケートでは全生徒の90%がNIEの授業に興味を高め、96%が自発的に発表できたと答えた。

 今年1月には、3年の生徒らが「総合的な学習の時間」を利用し、関心を持った記事を紹介し合う活動に取り組んだ。航空会社の人員削減や東日本大震災から10年を迎える被災地の若い世代の活躍、コロナ禍の社会を下支えする仕事の現状などの時事問題に着目し、自身の職業観を身に付けた。救急救命士を目指し、関西圏の専門学校に進学した佐藤美泉花(みいな)さん(18)は、被災の経験から消防士となって生きる岩手県大槌町の青年を取り上げた記事を紹介。「就きたい職業を深く知るために、新聞を積極的に読み、情報収集したい」と意欲を高めた。

 同校は、生徒個人や2人組で新聞記事を再構成する「新聞コラージュ作品」を製作してコンクールに応募する活動を長年続けている。「児童虐待」について子どもの側面、社会の仕組みの側面から迫ったり、「ウイルスとの共存」について過去、現在、未来の視点から言及したりと、多角的な切り口でテーマを探究した。昨年度NIE担当の加藤みゆき教諭(57)は「生徒たちは、記事に親しむことで見方や考え方が広がり、小論文や面接で自信を持って意見を伝えられるようになった」と、進学や就職につながる成果を実感していた。