SDGsの17の目標から興味あるテーマを選び、それに関連した記事を探す生徒ら=羽島郡笠松町弥生町、笠松中学校
タブレット端末で記事の写真を撮影し、内容の要約や記事に対する意見をまとめる活動に取り組む=同

 NIE実践校の笠松中学校(羽島郡笠松町弥生町)では、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)と新聞記事を関連させた探究活動を進めている。記事を通してSDGsを具体的に理解し、世界共通の普遍的な問題やそれを解決する試みを学ぶことで、校内や地域をより良くする行動を多角的な視点で考える力を高めている。

 小中学校で全面実施している「新学習指導要領」にも、前文と総則に「持続可能な社会の創り手の育成」を明記。中学校では社会や理科、技術・家庭で関連する学習内容が盛り込まれた。

 同校は昨年度から、「総合的な学習の時間」のテーマをSDGsの17の目標に基づいて設定し、全学級が独自の取り組みを展開している。生徒らに「自分たちができること」を日常的に意識してもらおうと、学校図書館の一角にSDGsに関連した書籍コーナーを設け、その横に新聞を並べるようにした。NIE推進を担う合唱文化委員会が17の目標に沿った記事を選び、その記事に対する意見を昼の放送で紹介する活動を続ける。NIE担当の古橋良一教諭(36)は、「複数の問題が連鎖的かつ同時多発的に発生したコロナ禍は、まさにSDGsが示す課題そのもの。社会課題を記事からつかみ、当たり前が覆る社会に対応できる人材を育てたい」と狙いを語る。

 実践校2年目となる本年度は、1人1台のタブレット端末を活用。新聞記事をデジタルデータ化し、パワーポイントを使って要約したり、意見をまとめたりする力を養う。

 5月下旬。3年2組では1年間の探究活動のテーマを決めるため、身近な話題を記事から収集。生徒たちが当初、どんなニュースや出来事が17の目標に当てはまるか判断できないでいると、担任の前田大輝教諭(28)は、見出しに着目するよう助言。すると、県内自治体が新年度予算案で環境SDGsを推進する動きを報じる地域面や、自然保護と地域経済の発展を考える持続可能な観光をPRする広告紙面などを各自が選び、関心ある記事をタブレット端末で撮影した。

 「奄美・沖縄、世界自然遺産に」の記事を選んだ岩田日菜香(ひなか)さん(15)は、希少種を取り巻く現状や被害原因に蛍光ペン、データや数字に線を引くなど、要約しやすいよう工夫。2年時にプラスチックゴミによる海洋汚染を調べ、海と川、山のつながりを学んだ北川夕真(ゆま)さん(14)は、「ウミガメ保護条例」の拠点として登録された三重県の道の駅の記事に着目。「定置網から保護されたウミガメの存在を、多くの人が利用する道の駅で知らせていた。環境保護の行動を呼び掛けるヒントにつながるのでは」と意見を述べた。