先端を薄く加工し、厚さと薄さの両方を兼ね備えた切れ刃=関市一本木町、木村刃物製作所

 硬い物を切る丈夫な厚い刃と細かい作業ができる薄い刃。一つのキッチンばさみで両方の刃を実現させたのが、木村刃物製作所(岐阜県関市一本木町、木村聡社長)の「ハイブリッドキッチン」。切れ刃の先端を薄く加工することで、硬いカニの脚から切りづらい食品トレーまでストレスなく切れる。企画デザイン室の木村優室長(50)は「いろんな用途に使える1本」と胸を張る。

 子ども用の文具はさみが主力で、取り扱う商品の幅を広げようとキッチンばさみの商品化に乗り出した。ハイブリッドキッチンは第1号だ。「後発なので、市場にある商品と同じものでは売れない」。開発時には20~30種類の市販のキッチンばさみを実際に購入し、使い勝手や特徴を徹底的に調査した。

 消費者アンケートでは、キッチンばさみの用途や選ぶ理由を細かく聞き取って分析。見えてきたのは、キッチンばさみの多様な用途だった。近年は料理の手間を減らす時短料理が注目され、若い世代では包丁を使わずキッチンばさみだけで調理する傾向が強まっている。食材以外に、紙パックやトレーのカットにもキッチンばさみを使う。木村室長は「これほどいろいろな使われ方をしていることに驚いた」と明かす。

 コンセプトにしたのは「オールマイティー」な商品。ただ硬い物を簡単に切れる厚刃を採用すると、柔らかい物が切りにくい。逆に薄い刃では、硬い物が切れない。思い付いたのが、約3ミリの厚刃の先端を薄く加工することだった。

 木村室長が提案した当初は「そんなことできるのか」と社内から不安の声も出たが、刃先を削ったことで軽量化も実現。「重いはさみは女性が使いづらい。長く使うなら適度な軽さが必要」と持ちやすさの重要性を強調する。

 ほかにも受け刃をギザギザに加工し、食材が滑らないよう工夫。刃は分解できるようにして衛生面に配慮した。利用者アンケートでは、「紙を切るように野菜が切れる」といった狙い通りのコメントが並んだ。

 昨年3月の発売当初はコロナ禍による営業自粛で販路開拓に苦しんだが、徐々に口コミで広まり、自社の人気商品に成長した。ふるさと納税の返礼品としての注文も増え、売れ行きは堅調に伸びている。木村室長は「派手さはないが、良いものなら必ず売れる」と手応えをつかんでいる。