地方騎手トップの成績で「ヤングジョッキーズシリーズ」ファイナルラウンドに挑む渡辺竜也騎手
金沢ラウンド初戦は笠松・渡辺騎手、愛知・加藤聡一騎手によるワンツーフィニッシュとなった
JRA東日本地区をトップ通過した藤田菜七子騎手
ファイナル進出が決まった、左から加藤騎手、渡辺騎手、栗原大河騎手(金沢)の3人
笠松ラウンドでいきなり勝利を飾った渡辺騎手。ファイナルではどんな活躍を見せるか

 笠松発の新たなサクセスストーリー。「中央突破で全国制覇」の野望に燃える17歳若武者の挑戦が、最終決戦を迎える。

 笠松競馬で今春デビューしたばかりの新人・渡辺竜也騎手が、12月27日に大井競馬場、28日に中山競馬場で行われる「ヤングジョッキーズシリーズ」ファイナルラウンドの出場切符をゲット。地方、JRAの代表騎手14人のうち最年少のファイナリストで、「初代王者」の座を目指して、夢舞台にチャレンジする。

 トライアルラウンドが4月から11月まで、笠松、南関東など全国11カ所の地方競馬場で行われ、JRA代表騎手7人と地方競馬代表騎手7人が決まった。17~23歳と超フレッシュな顔触れで、JRAからは藤田菜七子騎手(美浦)らが進出した。

 5月の笠松ラウンド初戦、渡辺騎手は4番人気フジノシラユキで競り勝ち、好ダッシュ。金沢ラウンド初戦でも勝利を挙げて、西日本地区(地方騎手)を1位通過。地方騎手全体(24人)でもトップの成績で、新人ではただ一人ファイナル進出を決めた。西日本地区からは、加藤聡一騎手(愛知)が2位、栗原大河騎手(金沢)が3位で進出。東海、北陸地区の3人が上位を独占し、若手ジョッキーのレベルの高さを示した。

 渡辺騎手は「ホッとしていますし、素直にうれしいです。ファイナルでも優勝を目指して頑張りたい。どの馬に当たっても、一生懸命に一つでも上の着順を狙う」と力強く喜びの声。千葉県船橋市の出身だが、中山競馬場にはまだ行ったことがなく、大井へは競馬学校時代の見学で1度だけ訪れたことがあるという。ファイナルまでに笠松開催もあり、「騎乗技術を向上させて、体調を管理して万全の状態で挑みたい」と、頂点へ闘志を燃やしている。

 JRA東日本地区を1位通過したのは菜七子ジョッキー。1勝を含め全て5着以内の好成績で「年齢が近い人が多いので、いつも以上に負けたくないという気持ちで臨んだ。(ファイナリストになって)本当にうれしいですし、しっかり乗って優勝を目指したい」と菜七子スマイル。10月末には斜行による進路妨害で初めての騎乗停止処分を受けたが、復帰初日にJRA女性騎手の年間最多勝記録を更新する13勝目を挙げた。3年連続リーディングの戸崎圭太騎手に競り勝った勝負根性は素晴らしかった。ファイナルではJRA勢のエース的存在でファンの熱視線を浴びることだろう。

 菜七子フィーバーは相変わらずで、中央は全競馬場で騎乗。「地方競馬も全場へ行きたい」ということなら、笠松にもそろそろ参戦してほしいが、なかなか良い返事がもらえてないようで、いつになることやら...。馬主サイドの強い後押しが必要になるが、もし実現するなら、ファンサービスのためにも、狭いウイナーズサークルを拡張するなどの施設改修策も必要か。

 ファイナルラウンド進出者と日程は次の通り。

 ☆地方競馬代表騎手

【西日本】渡辺竜也(笠松)、加藤聡一(愛知)、栗原大河(金沢)

【東日本】臼井健太郎(船橋)、鈴木祐(岩手)、保園翔也(浦和)、中越琉世(川崎)

 ☆JRA代表騎手

【西日本】森裕太朗、岩崎翼、小崎綾也、荻野極(栗東)

【東日本】藤田菜七子、菊沢一樹、木幡育也(美浦)

 ■12月27日・大井(ナイター)

7R(C2級特別、ダート)、9R(B3級特別、ダート)

 ■12月28日・中山

8R(500万円以下、芝)、10R(1000万円以下、ダート)

 JRA勢ではトライアル3勝で全体のトップ通過を果たした森裕太朗騎手が脅威の存在。笠松でも勝利を飾っている成長株の荻野極騎手や、19歳新人の木幡育也騎手もファイナルに滑り込み、注目される。

 デビューして8カ月の渡辺騎手は、笠松では同じ厩舎の藤原幹生騎手やリーディングの佐藤友則騎手ら、目標とする先輩騎手から騎乗技術を学び、勝ち星を33勝(名古屋、金沢各1勝含む)まで伸ばした。スタートが得意で、出遅れもほとんどないが、「まだレースの流れが読めていないことがある」「勝つことにもっと執念を燃やせ」といった声もある。

 有馬記念(12月24日)の4日後、新設されたGⅠ「ホープフルS」の前に行われるヤングジョッキーズシリーズの最終戦。全国の競馬ファンに名前と顔を覚えてもらう絶好のチャンスでもある。渡辺騎手にとっては初めてとなる芝コース(中山)も待ち受けており、厳しい戦いになるだろうが、JRA勢に気後れすることなく果敢に攻めたい。

 まずは大井の初戦でスタートダッシュを決めて、波に乗りたい。1人でちょっと心細いかもしれないが、地元の家族や笠松の先輩騎手、ファンたちが背中を押して応援してくれるから大丈夫。オグリキャップがラストランを飾った中山には、きっと「笠松魂」が宿っているはず。広々とした競馬場で思い切った騎乗をして「V字」の勝負服通り、天下取りに挑んでほしい。