皮膚科医 清島真理子氏

 2月20日はアレルギーの日です。今回は食物アレルギーの話をしましょう。食物アレルギーを起こすと85%の人で皮膚症状が起きます。腹痛やおう吐、息苦しさやぜんそく症状を起こすこともあります。原因の食物を口にしてから数分から数時間後、普通は15分くらいで口のかゆみやじんましんなどを起こします。血圧が低下したり、意識がなくなったりするなどのアナフィラキシーショックの状態となる人も10%くらいいます。

 果物などを食べた直後から、舌が腫れた感じや喉のヒリヒリ感、口の周りが赤くなったり喉が詰まりそうになったりする場合があり、これは「口腔(こうくう)アレルギー症候群」と呼ばれます。また、小麦製品やエビなどを食べた後1~4時間以内に運動をすると、じんましんやショック症状の出る「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」というタイプの食物アレルギーもあります。

 食物アレルギーの原因として卵、牛乳、小麦が常に上位を占めてきました。ところが最近の統計では木の実類(ナッツ)アレルギーが増えてきて、卵、牛乳に次いで3番目に多いことが分かりました。4番目が小麦で、5番目がピーナツです。

 ナッツアレルギーの原因で多いのはクルミやカシューナッツです。1種類のナッツにアレルギーがあるからといってすべてのナッツにアレルギーを起こすわけではありません。ただし、カシューナッツとピスタチオ、といったように2種類以上でアレルギーを起こすこともあります。

 ピーナツは分類上ナッツ類とは別のものになりますが、ピーナツアレルギーもナッツ類と同じように重症となることがあります。

 なぜナッツアレルギーが増えているのでしょうか? ナッツ類の国内消費量、輸入量が増えている点が指摘されています。おつまみとしてだけでなく、カレールウ、チョコレートやクッキーなどの菓子類、パン、ドレッシング、ソース類などいろいろな食品に含まれています。また美容のための製品やサプリメントに含まれることもあります。

 食物アレルギーのある人は食品の原材料表示に注意する必要があります。ピーナツは以前から表示の義務がありましたが、アレルギーが増えているためクルミも表示が義務化されることになりました。

 食物アレルギーを疑った場合、採血や皮膚アレルギーテストで検査します。食物経口負荷試験といって実際に少量食べる検査もありますが、緊急対応のできる態勢で行う必要があります。

 食物アレルギーの人は原因となる食物を避けることが大切です。避けたつもりでも誤って食べてしまう場合があります。そこで重症のアレルギーを起こしたことがあって今後も起こす危険のある人は「エピペン」という緊急用の注射を持っておくとよい場合があります。これは病院へ到着するまでの補助的な注射です。講習を受けて登録された医師から指導を受けた上で携帯することができます。

(岐阜大学名誉教授、朝日大学病院皮膚科教授)